九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

神学

正教会では「食」も信仰生活の一環

昨日は4月にご葬儀を行った方の40日祭パニヒダ(故人の永眠後40日目を記憶する祈り)を執り行うため、福岡に出張していました。 5月2日に福岡で復活祭を執り行い、現地に泊まって翌日にパニヒダを献じる予定でしたが、福岡県の外出自粛要請を受けて、公開の…

聖大土曜日 主の死から復活への「移行期間」

今日は復活祭前日の聖大土曜日。朝から聖体礼儀を行いました。 この祈祷は年に一回だけの特別なもので、十字架上で死んだキリストが墓の中で復活したこと、つまり言わば「墓の中で死から復活へ移行」していることを記憶するものです。 www.youtube.com まず…

聖大金曜日 「芝居」でなく「典礼」で見せる受難劇

今日はイエスの十字架上の死と葬りを記憶する聖大金曜日です。 昨日、受難週間(聖週間)において主の受難を記憶するにあたり、ヨーロッパの教会(つまりカトリック教会やプロテスタント教会)で「受難劇」や「受難曲」といった、芝居やオラトリオ(演技のな…

十二福音の読み ~正教会流「ヨハネ受難曲」

いよいよ復活祭が近づいてきましたので、今日は妻がクリーチを作りました。今日焼いたものに、明日トッピングをする予定です。 クリーチとは復活祭の時に食される菓子パンのロシア語名です。セルビアやルーマニアなど、バルカン諸国ではホールケーキのような…

門司で船舶成聖式

昨日から泊りがけで北九州市に出張していました。 今日の11時に門司区の太刀浦埠頭でギリシャ船の船舶成聖式を行うためです。 「成聖」(Blessing)とは、いろいろな物品や食べ物に聖水をかけて、それを使用したり食べたりする人に神の祝福があるように祈る…

アカフィストのスボタについて

今日は人吉ハリストス正教会での子育てサロンの日。 いつも来ている母子が二組、見えられました。 今日の参加者たち 夕刻からは聖堂で、アカフィストのスボタ(大斎第五土曜日)の早課を執り行いました。 www.youtube.com 「アカフィスト」も「スボタ」も教…

子どもと天国~幼児の葬儀を司祷して

昨日は福岡市内でご葬儀を司祷しました。 個人情報の問題もありますので、被葬者は「不慮の出来事で突然亡くなった幼いお子さん」とだけ記します。 埋葬式の後、子どもの死で精神に変調をきたしてしまった母親と面会するように遺族から依頼されたので、収容…

志村けんさんの一周忌 永眠者との「お別れ」の意味を考える

九州南部ではすっかり桜も終わり、ツツジの花が開きました。 先週末、鹿児島教会に行く前に立ち寄った伊佐市・曽木のダム湖畔では、シャクナゲが見事に咲いていて驚きました。 曽木で見かけたシャクナゲの花 鹿児島教会に到着してみると、境内のツツジが満開…

正教勝利の主日~イコンと偶像とは意味が違う

今日は人吉ハリストス正教会で大斎第一主日の聖体礼儀。 聖体礼儀後に信徒総会を開催。昨日、資料を準備しておいたので滞りなく終わりました。 ただ、決算月が12月である関係上、総会を3月末に行ってきたのですが、教会の役員は公的な仕事に就かれている方た…

あっという間に春本番~大斎は復活への希望に満ちた期間

今週から大斎が始まり、人吉ハリストス正教会で毎朝夕の「大斎初週祈祷」を続けています。 大斎初週祈祷(晩課) それにしても、2月後半から暖かい日が続いています。調べてみたら3月になってから今日までの17日間で、20℃以上の日が8日、18℃以上まで広げると…

赦罪の主日~「他人を赦す」とは相手のためではなく、むしろ自分のため

今日は熊本ハリストス正教会で、赦罪の主日(Sunday of Forgiveness)の聖体礼儀を行いました。 コロナ禍とはいえ、14人も参祷者がありました。私が一昨年に九州に着任してから、熊本教会では最多です。 着任当初は参祷者ゼロの時もありましたが、今は夢のよ…

最後の審判~天国がご褒美で地獄が罰なのではない

昨日は福岡伝道所で断肉の主日(Meat Fare Sunday)の聖体礼儀を行いました。 2021.03.07 断肉の主日 聖体礼儀 今年の大斎は3月14日(日)の夕刻から始まり、ほぼ全ての動物性食品を食べないことになりますが、鳥獣の肉は1週間前倒しで禁食となるので7日まで…

帰ってきた放蕩息子~神への「償い」なんか不要

昨日は鹿児島ハリストス正教会で、蕩子の主日(Sunday of the Prodigal Son)聖体礼儀を執り行いました。 蕩子とは一般には「放蕩息子」と訳されます。この日はルカによる福音書15章の「放蕩息子のたとえ」が読まれることから、正教会では蕩子の主日と呼んで…

税吏とファリセイの主日にあたって~聖書は昔話ではない

人吉の昨日朝の最低気温は4℃。日中の最高気温は22℃でした。 朝、教会に行く時は寒くてダウンを着込んでいたのに、聖体礼儀を終えて祭服を脱いだ時は暑くてシャツ一枚になりました。 さて、正教会では復活祭前の大斎(おおものいみ。Great Lent)を準備する期…

亜使徒聖ニコライ祭にあたって~私たちの宗教は「キリスト教」であって「ロシア教」ではない

本日は亜使徒聖ニコライ祭。1912年2月16日、日本に東方正教会のキリスト教を伝えたニコライ・カサーツキン大主教が永眠、1970年に列聖されたことで「永眠日」から「聖人の祭日」となりました。 亜使徒聖ニコライ わが国では私たちの信仰する宗教を「ロシア正…

主の迎接祭~「長生き」と「幸福感」を結びつけるヒント

2月15日(ユリウス暦の2月2日)は降誕祭から40日目であり、正教会では「主の迎接祭」という祭日です。 これはイエスが生まれて40日目に、律法(この場合は旧約聖書のレビ記12章)の定めに従って、エルサレムの神殿に捧げられるためにお参りしたことを記念す…

日本二十六聖人~「殉教者」という概念の正しい理解について

2月5日はカトリック教会では「日本二十六聖人」の記念日です。 日本二十六聖人の碑(長崎・西坂公園) 日本二十六聖人とは1597年2月5日(慶長元年12月19日)、豊臣秀吉の命令で処刑されたパウロ三木ら26人のカトリック教徒です。 カトリック教会では彼らを「…

暦のズレ・教会の祭日のズレ~正教会ならではの話

今日は立春。昨日は節分でした。 自分の感覚としては立春は2月4日、その前日の節分は2月3日であって、それが「常識」だと思っていたのですが、どうやらそうではなかったようです。 今回、立春の日が1日ずれたのは1897年以来124年ぶりとのことですが、その理…

本のすすめ~イラリオン府主教『祈りについて』

今月、ロシア正教会の渉外局長であるイラリオン府主教の著書『祈りについて』の邦訳が出版されました。 渉外局長とは、総主教をアメリカ大統領に例えたら大統領首席補佐官と国務長官を足したような要職です。ちなみにキリル現総主教の前ポストも渉外局長です…

神現祭(Epiphany)~民間伝承との関わり合い

1月19日(ユリウス暦の1月6日)は、正教会の大祭の一つである神現祭(Epiphany)です。 これは、キリストがヨルダン川で洗礼者ヨハネ(日本正教会表記では前駆授洗イオアン)から洗礼を受けたことを記念するものです。 イコン「主の洗礼」山下りん画 高崎ハ…

サロフのセラフィム~信仰の目的と手段について

1月15日(ユリウス暦の1月2日)は正教会の聖人・サロフの聖セラフィム(1759-1833)の祭日(記念日)です。 セラフィムは19世紀のロシアを代表する聖人であり、現在もロシアで最も崇敬されている聖人の一人です。ちなみに仙台のセラフィム大主教の修道名は、…

クリスマス考~いろいろな誤解に対して・その3

来週、12月19日は私の長男の30歳の誕生日です。 彼は私たち夫婦の第一子ですから、その日は私も妻も初めて「親」になって30年の記念日ということになります。 彼を含めて4人のわが子たちは東京、私たち夫婦だけが人吉と離れて生活していますし、それに加え…

クリスマス考~いろいろな誤解に対して・その2

長い間コロナ無風地帯だった人吉で、昨日と今日、コロナ感染者が判明しました。医療従事者ということで接触者も多く、市民は大変不安に感じています。 よって今日は人吉ハリストス正教会で、ベビー&ママサロンの開催日でしたが、感染リスクを考慮して休止。…

クリスマス考~いろいろな誤解に対して・その1

クリスマスが近いということで、キリスト教の教会ならどこでも準備に余念がないことでしょう。 私も司祭に叙せられて12年目の降誕祭になるのですが、こうして正教会で牧会していると、ずいぶん降誕祭についての誤解があるなあと思います(クリスマスはキリス…

病者平癒祈祷~他人のために祈ることの意味

月曜日に面識のないアメリカ人正教徒の方からメールが来ました。仮にグレゴリーさんとしておきます。 グレゴリーさんはこれまで熊本に長く住んでおり、熊本出身のケイ子さんと結婚して、今はノルウェーに住んでいるとのこと。 最近、ケイ子さんのお父様のT…

今月もパニヒダを献じました~祈りの言葉「永遠の記憶」について

先月、ウクライナ出身で福岡在住の信徒に依頼されて、お父様のために人吉でパニヒダ(永眠者への祈り)を献じました。 frgregory.hatenablog.com 同じ方から、10月16日はお兄様のウラジーミル兄の命日なので、またパニヒダを献じて欲しいと頼まれましたので…

コロナ禍の日本正教会

今日は米国のトランプ大統領が、新型コロナウイルスに感染していることが判明したとニュースで報じられていました。 コロナ禍が今もなお世界的な脅威であり、どんなに偉い人だろうと人間である以上、感染のリスクがあることを象徴する出来事です。 キリスト…

十字架挙栄祭について~フラワーアレンジメントの制作

9月27日(ユリウス暦の9月14日)は、4世紀にイエスがかけられた十字架がエルサレムで発見されたことを記念する十字架挙栄祭(じゅうじかきょえいさい)です。 発見者の皇太后エレナは、ローマ皇帝でキリスト教を初めて公認したコンスタンティヌス大帝の母親…

教区の献金の案内を編集しています~正教会の「教区」とは、「司祭」とは

私は日本ハリストス正教会教団の専従聖職者で、西日本主教教区に所属しています。 日本正教会には東京、東日本(仙台)、西日本(京都)の三つの主教教区があり、それぞれ教区単位で宣教に関わる活動を行っています。 また、各教区とも単独で運営できるだけ…

パニヒダを献じました~正教会での永眠者への祈りの教義について

今日は人吉ハリストス正教会で、正教会の永眠者への祈り「パニヒダ」を献じました。 9月6日に福岡伝道所に巡回した時、そこに毎月来ているウクライナ人女性信徒から、「今度の9月16日は父のエフゲニイが5年前に亡くなった日。ウクライナの教会でも父への祈り…