九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

聖大土曜日 主の死から復活への「移行期間」


今日は復活祭前日の聖大土曜日。朝から聖体礼儀を行いました。

この祈祷は年に一回だけの特別なもので、十字架上で死んだキリストが墓の中で復活したこと、つまり言わば「墓の中で死から復活へ移行」していることを記憶するものです。

 


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まず旧約聖書から15箇所が朗読されます。天地創造(創世記)、救いの約束(出エジプト記、ダニエル書など)、救世主の受難(イザヤ書など)と復活(列王記、ヨナ書など)といったテーマを網羅するもので、キリスト教信仰の根拠となっている旧約聖書の記述のいわば「ハイライト集」となっています。

続いて使徒書簡からロマ書の第6章。私たちが受ける洗礼とは、罪深い古い自分がキリストと共に十字架につけられて死に、神と共に生きる新しい自分がキリストと共に復活することだ、という内容です。「キリスト教信仰とは地上における自分自身の死と復活」という極めて重要な命題です。

 

ロマ書の朗読が終わると、聖堂内の大斎用の黒い装飾を、白や金の装飾に交換します。司祭も黒い祭服から純白の祭服に着替えます。まさに死から復活への移行を目に見える形で象るのです。

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黒い祭服(上)から白い祭服(下)へチェンジ


 そして司祭は福音書からマタイ伝の第28章を朗読します。イエスが復活して墓は空になり、ガリラヤで弟子たちに現れて「私は世の終わりまで、いつもあなた方と共にいる」(マタイ28:20)と告げる内容です。復活はただの歴史上の事件でもファンタジーでもなく、「復活したキリストは永遠に信じる者のそばにいる」というメッセージです。

 

このようにして復活祭前の三日間、正教会は主の死と復活へのプロセスを、聖書の裏付けのもとにビジュアルな象りを伴って記憶しているわけです。

 

さて、祈祷が終わった後もボンヤリしていられません。

明日の復活祭は20名前後の参祷者(普段の人吉は数名)が見込まれるので、「密」にならないよう聖堂内の椅子を撤去。イースターエッグを置く台を飾り付けました。

 

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復活祭に向けて聖堂内を設営

子どもの参祷者も多く見込まれるので、妻が正教会の復活祭の挨拶「ハリストス復活」を日本語、ロシア語、英語、ルーマニア語の四か国語で大きく書いて掲示しました。

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復活祭の挨拶

 

帰宅後は一昨日に焼いたクリーチ(復活祭で食するロシア風菓子パン)に、妻と娘がトッピング。2015年にルーマニアに巡礼旅行した時に買ったまま眠っていたラズベリーのパリンカ(果実の蒸留酒)で、ドライフルーツを浸けたものを使いました。なかなかリッチな出来栄えですが、これを明日の参祷者にプレゼントします。

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妻と娘でクリーチ作り

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ルーマニアで買ったパリンカ

 コロナ禍で祝賀会などを伴う盛大な復活祭はできませんが、この山奥の人吉まで参祷された信者さんとともに、ささやかながら主の復活をお祝いできればと思っています。