九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

神学

復活祭の日付 なぜ正教会は違うのか

今年は例年より桜の開花が遅れていましたが、ここ数日の暖かさで(東京は昨日、28℃もあったそうですね)人吉でも一気に満開になりました。 人吉ハリストス正教会の聖堂脇の桜も見事です。桜の木は一本しかありませんが。 人吉ハリストス正教会の桜 さて、西…

福岡で聖五旬祭(ペンテコステ) 今も聖霊降臨は起きている

先日の日曜日、6月4日は復活大祭から50日目の祭日、聖五旬祭でした。 聖五旬祭(ペンテコステ)は復活大祭と同様、キリスト教会共通の祭日ですが、今年の正教会の復活大祭は西方教会(カトリックとプロテスタント)と1週間遅れだったので、聖五旬祭も1週間ず…

聖なる三日間③ 死から復活への移動日

今日は聖大土曜日です。 日本正教会は曜日の中で、土曜日だけを教会スラブ語のまま「スボタ」(安息日)と表記するので、今日のことも祈祷書では「聖大スボタ」と書いてあるのですが、一般の方に「スボタ」というのは馴染みがない言葉ですので、私は「土曜日…

聖なる三日間② イエスの葬儀

今日は聖大金曜日。イエスが十字架上で死に、葬られたことを記憶する日です。 キリスト教の教義の根本は、永遠に存在する神がいつか死ぬ人間となってこの世に来られ(受肉)、実際に死んで葬られたが(受難)、復活して使徒に姿を現した(復活)ことにありま…

聖なる三日間① 正教会流の受難曲

今度の日曜日は復活祭。今週は受難週間(他教派でいう聖週間)です。 主の受難を記憶する特別な1週間という位置づけですが、とりわけ今日からの三日間はイエスの十字架上の死と葬りを時系列的に振り返る意味で、特に重要な聖なる期間といえます。 今日の午前…

聖枝祭とネコヤナギ

西方教会(カトリックとプロテスタント)では今日が復活祭ですね。おめでとうございます。 今年は東方正教会では1週間ずれて、来週の日曜日が復活祭となります。 今日は復活祭の前の日曜日、聖枝祭の聖体礼儀を熊本ハリストス正教会で執り行いました。 聖枝…

東日本大震災の日と糖飯

本日、3月11日はご存じのとおり、2011年の東日本大震災の発生日です。 昨年の3月11日は偶然、大斎第一週の金曜日だったので、正教会の伝統に則って糖飯の成聖をしています。 frgregory.hatenablog.com 糖飯はパニヒダ(永眠者のための祈祷)で必須のアイテム…

正教勝利の主日

今朝の人吉の最低気温は0.1℃。しかし日中の最高気温は20℃を超えました。 あまりにも寒暖差が激しくて、朝は暖房をガンガン焚いているのに、昼間は車の中が暑くて冷房を入れています。 ただ、季節は春に向かって駆け足で進んでいるようで、桜の開花予報もずい…

大斎のスタートは赦し合いから

今週から大斎となり、毎朝夕に大斎初週(The First Week of Great Lent)の祈祷をしているので、投稿できないまま日にちが過ぎてしまいました。 2月26日は大斎前の最後の日曜日でした。 大斎期間は動物性食品が食べられないので、この日までに酪農製品を食べ…

マースレニツァ(乾酪週間) ケーキも食べ収め

先週のコロナ感染でしばらく教会での祈祷を休んでいましたが、今日の夕刻の晩祷から職場復帰ならぬ祈祷復帰しました。 明日は人吉ハリストス正教会で聖体礼儀と信徒総会。 夕刻からは大斎(Great Lent)のスタートとなります。 この大斎は復活祭の前日までの…

他人と自分を比較することの落とし穴

今年の正教会の復活祭は、西方教会(カトリックとプロテスタント)と1週間遅れの4月16日です。 その復活祭の約7週間前、2月26日の夕刻から、復活祭に向けての準備期間「大斎」(Great Lent)が始まります。他教派では四旬節や大斎節など、呼称は様々です。 …

ベネディクト16世の最後の言葉に思う

日本正教会では明日の1月7日(ユリウス暦の12月25日)が降誕祭です。私は福岡で降誕祭の祈祷を執り行うことにしています。 今日は降誕祭の前日、英語でいうクリスマスイヴです。 クリスマスイヴとは、わが国では「クリスマスの前夜」と誤解されている向きが…

この新年が「主の禧年(よろこばしき年)」となりますように

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 元日の今朝は晴天との予報だったので、初日の出を見に行きました。 司祭館のすぐ近くに小高い丘があり、頂上が村山公園という公園になっていて、人吉市内が見渡せる展望台があります…

生神女進堂祭 自分自身の体こそが神殿

昨日、12月4日は福岡伝道所に巡回しました。 この日(ユリウス暦の11月21日)は生神女進堂祭の祭日です。 www.youtube.com イコン「生神女の進堂」 生神女進堂祭とは、生神女(イエスの母)マリヤが3歳の時、両親のヨアキムとアンナのもとを離れてエルサレム…

福岡巡回 子どものための祈祷

昨日は福岡伝道所に巡回し、聖体礼儀を執り行いました。 www.youtube.com 毎年、11月の福岡巡回の時は子どもの健やかな成長を祈念して祈祷を献じています。 「学童就学時の祈祷」の典礼文を用いていますが、固い言い回しなので「子どもモレーベン」と名づけ…

イコンは偶像ではない 第七全地公会記念日

昨日は鹿児島ハリストス正教会に巡回していました。 全国的に秋が深まってきた感がありますが、昨日の鹿児島は28℃。さすが南国です! 鹿児島ハリストス正教会での聖体礼儀 www.youtube.com 帰宅すると、横浜在住のWさんから贈られたギリシャ製のイコンが届き…

人吉で生神女庇護祭 生神女の「庇護」とは?

昨日は人吉ハリストス正教会で生神女庇護祭(祭日は10月14日)の聖体礼儀を執り行いました。 人吉教会は「生神女庇護聖堂」、つまり生神女庇護を記念した聖堂なので、生神女庇護祭は教会の記念日(堂祭)となります。 人吉教会での生神女庇護祭聖体礼儀 www.…

熊本に巡回 10月9日は何の祭?

昨日は熊本ハリストス正教会に巡回しました。 熊本ハリストス正教会での聖体礼儀 www.youtube.com この日は嬉しい申し出がありました。 熊本教会の信徒数は2世帯3人まで減っているのですが、執事長の奥様から洗礼の申し出がありました。 執事長のお宅は明治…

十字架を讃美するとはどういう意味か

一昨日は福岡伝道所に巡回し、十字架挙栄祭の聖体礼儀を執り行いました。 www.youtube.com 十字架挙栄祭では聖堂の中央に花で飾り付けた十字架を安置し、参祷者はそれに伏拝(ひれ伏すこと)して讃美することが正教会の伝統です。 聖体礼儀では祈祷の終了時…

神はその民を顧みた(ルカ7:16)

明日から一泊で福岡巡回です。 今日はそれに備えて、前任地の横浜教会所属信徒のクセニアさん(仮名)から送られてきた小麦粉で、妻が聖体礼儀に用いるパン「聖パン」を焼きました。 クセニアさんはウクライナ出身のシングルマザーで、一人息子のイリヤくん…

主の顕栄祭 収穫への感謝とキリスト教の伝統

今日は人吉ハリストス正教会で、主の顕栄祭を執り行いました。 主の顕栄祭とは、キリストの変容(マタイ17章)を記念する祭で、本来の祭日は8月19日(ユリウス暦の8月6日)です。 祭の位置づけとしては、復活祭に次いで重要な12の祭「十二大祭」の一つ。つま…

熊本で聖五旬祭 聖霊降臨がもたらしたのは「福音宣教」

今日は熊本ハリストス正教会に巡回。復活祭から50日目の聖五旬祭の祈祷を執り行いました。この聖五旬祭とは旧約の信仰(今日のユダヤ教)では、過越祭から50日目の祭日のことでしたが、キリスト教ではキリストの復活の後の聖五旬祭の日に起きた「聖霊降臨」…

鹿児島で迎えた復活祭

鹿児島への出張三日目。今日はいよいよ復活大祭です。 復活大祭の祈祷は深夜に開式し、日の出前に終わらなくてはならないというのが正教会の定めです。聖書には、日曜日の夜明けにマグダラのマリヤらがイエスの墓に行った時、既にイエスは復活した後で墓には…

聖大土曜日 死から復活への移動日

今日は復活祭の前日の聖大土曜日。日本正教会用語では「聖大スボタ」といいます。スボタとは「安息日」を意味する教会スラブ語で、曜日としては土曜日のことですが、わが国では馴染みがない単語なので、私は一般向けの文章では「土曜日」と表記しています。 …

二人のマリヤにささげた週末

先週の土曜日は人吉ハリストス正教会で、大斎第五土曜日の早課と聖体礼儀を執り行いました。 この日は生神女(イエスの母)マリヤに捧げられた日であり、早課の中で司祭が生神女を讃美するアカフィストという祈祷文を朗読することから、「アカフィストのスボ…

生神女福音祭 そもそも「福音」って何?

私の住む人吉では、日中の気温は連日20℃を超え、桜もほとんど散ってしまいました。教会の敷地に勝手に生えている菜の花もすくすく成長し、雑草のレベルを通り越してちょっとした茂みのようになっています。第三者的に花を眺めている分には良いかもしれません…

信仰は権力に屈しない 正教勝利の主日

先週末は福岡に巡回していました。 www.youtube.com 福岡伝道所にはウクライナ出身の女性信徒が通っています。 彼女の故郷のドネツクは、まさにロシア軍に蹂躙されている地域です。わが人吉のように、不可抗力の自然災害だったならともかく、戦争という「人…

シリアの聖エフレムの祈り「兄弟を裁かせないでください」

いよいよ大斎(Great Lent)、つまり4月24日の復活祭を迎える前の7週間の準備期間に入りました。 「大斎初週」、つまり大斎に入って最初の一週間は特に重要で、「大斎初週祈祷」という一連の祈祷が朝から晩まで行われます。 もっとも修道院などとは異なり、…

最後の審判の判定基準は「隣人愛」

昨日は鹿児島ハリストス正教会で断肉の主日(Meat Fare Sunday)の聖体礼儀を執り行いました。 www.youtube.com 今年の正教会の復活祭は4月24日ですが、そのための約7週間の準備期間として3月7日(正確には3月6日の日没)から大斎に入ります。 キリスト教古…

祈祷文「天皇のために禱る」の意味

いま、ウクライナ情勢が世界の注目を集めています。 昨日、私の管轄の信徒から「ロシアとウクライナが事実上の戦争状態になりましたが、日本正教会にどのような影響がありますか」と問い合わせがありました。つまり、ロシア・ウクライナ二国間問題に対して日…