九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

二人のマリヤにささげた週末

先週の土曜日は人吉ハリストス正教会で、大斎第五土曜日の早課と聖体礼儀を執り行いました。

この日は生神女(イエスの母)マリヤに捧げられた日であり、早課の中で司祭が生神女を讃美するアカフィストという祈祷文を朗読することから、「アカフィストのスボタ」(スボタは教会スラブ語で土曜日の意味)と呼ばれています。


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早課だけで1時間半、聖体礼儀と合わせると2時間半かかります。

 

アカフィストの内容は、神の子を身籠ったマリヤをいろいろな表現で讃えながら延々と「慶べよ」と呼びかけるものです。そして最後の第13コンダクという段落で「衆人を凡そのわざわいより救い、及び将来の苦しみより逃れしめたまえ」という願いを述べます。

まさに今この時、ウクライナの戦禍に苦しんでいる正教の兄弟姉妹の救いを願うものであり、感慨深いものがありました。

 

アカフィストのスボタの祈祷を終えて熊本に移動。

日曜日は熊本ハリストス正教会で、大斎第五主日の聖体礼儀を執り行いました。


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大斎第五主日はエジプトのマリヤという聖人に捧げられた日ですので、「エギペトのマリヤの主日」(エギペトはエジプトの教会スラブ語読み)とも呼ばれます。

エジプトのマリヤについての紹介は一年前に書いていますので、過去記事を貼付しますが、彼女はたくさんのマリヤという名の聖人の中で「第二のマリヤ」(第一はもちろん生神女マリヤ)と呼ばれる大聖人です。

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エジプトのマリヤの伝記を描いたイコン

 

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エジプトのマリヤは若い頃、ふしだらな不良少女でしたが、それを悔い改めて47年もの間、生涯の終わりに至るまで砂漠での厳しい隠遁生活を自らに課しました。

つまり、人間は誰でも、そしていつでも自分の過ちを悔い改め、真摯に生きようと志すならば、神は受け入れてくれるということを、生涯をかけて体現した人物なのです。

 

救世主の母となることを「お言葉どおり、この身になりますように」(ルカ1:38)と進んで受け入れた生神女マリヤと、過去を悔い改め、自らの意思で徹底的な信仰生活を選んだエジプトのマリヤ…二人のマリヤの人生のスタイルは異なりますが、本来人間の生き方も人それぞれです。共通しているのはただ、誰もが自らの意思でその生き方を選択しているということだけです。

正教会は「信者はこういう掟を守ってこう生きなければならない。できなかったら地獄に落ちる」などと、人間を型にはめるようなことは言いません。むしろ多様な生き方において、その人が自らの意思で何を選択し、どう信仰を守って行くかを重視します。

自分の寿命が80年だと仮定すると、年齢的には間もなく第三クオーターの終わりに近づいていることになりますが、この正教会の信仰に従い、私も残りの人生を悔いなく生きていきたいと改めて思った週末でした。