九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

聖なる三日間③ 死から復活への移動日

今日は聖大土曜日です。

日本正教会は曜日の中で、土曜日だけを教会スラブ語のまま「スボタ」(安息日)と表記するので、今日のことも祈祷書では「聖大スボタ」と書いてあるのですが、一般の方に「スボタ」というのは馴染みがない言葉ですので、私は「土曜日」と書くようにしています。

 

復活祭の前日である今日のテーマは、主が墓の中で死から復活に移ったことです。

聖書によれば、イエスの死は金曜日の午後3時頃のことでした。日没から土曜日、すなわち安息日となり、全ての労働ができなくなります。そのため聖書に「安息日に遺体を十字架の上に残しておかないために」(ヨハネ19:31)とあるように、イエスの葬りは死後2時間ほどのうちに慌ただしく行われたと考えられます。

また、マグダラのマリヤらがイエスの墓に行ったのは「週の初めの日の朝ごく早く、日が出るとすぐ」(マルコ16:2)と書かれているように、日曜日の日の出直後ですが、この時点ですでにイエスは復活した後で、墓の中にはいませんでした。

よってキリストの復活は土曜日を挟んで、金曜日の日没から日曜日の日の出までの間に起きたことと言えます。

そこで正教会では聖大土曜日を「キリストの死から復活への移動日」と理解しているのです。

 

今日の聖体礼儀ではこれを反映して福音書の朗読、つまり主のメッセージを読み上げる前に、大斎期間中ずっと黒いままだった聖堂内の装飾の布を白や金色のものに交換します。

今日の開式前(上)と福音書の朗読前(下)

同様に司祭もそれまで着ていた黒い祭服を白に着替えます。

白い祭服に着替えた後

ちなみに白い祭服に着替えて朗読する福音書はマタイ伝28章の全文。マグダラのマリヤらが主の復活を発見したこと、および復活したキリストがガリラヤで弟子たちに復活を宣べ伝えるように伝えた記事です。

このことから、日曜日の復活祭は極論すれば「既に復活したキリストの記念」であり、「死からの復活」というテーマについては、むしろ今日の方がメインと言えるかもしれません。

昨日、ギリシャ人は金曜夜の主の葬りが終わった時点で「フリストス アネスティ」(ハリストス復活)と復活祭の挨拶をすると書きました。私がギリシャ人から初めてそう言われたときは「ちょっと気が早いんじゃないの」と思いましたが、神学的に考えれば彼らの方が正しかったのです。

 

いずれにせよ、7週間の大斎の祈祷は今日で終わりました。

聖体礼儀の後、妻と花や食材を購入。帰宅してからは参祷者に配るためのイースターエッグを作るなどして、明日の復活祭に備えました。

前任教会は参祷者が多く、教会でのイースターエッグの購入希望者もいましたので、婦人会を動員して一度に500個くらい作っていましたが、こちらは巡回の前にその教会の参祷予定者分を作れば足りるので、私たちの手作業で済んでいます。

人吉教会分のイースターエッグ作り

 

今日の人吉は雨が降ったり止んだりしていましたが、明日は回復するようです。

コロナもようやく収束していますし、晴れやかに復活祭を祝うことができればと思っています。