九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

鹿児島で迎えた復活祭

鹿児島への出張三日目。今日はいよいよ復活大祭です。

復活大祭の祈祷は深夜に開式し、日の出前に終わらなくてはならないというのが正教会の定めです。聖書には、日曜日の夜明けにマグダラのマリヤらがイエスの墓に行った時、既にイエスは復活した後で墓にはいなかったと書かれているからです。このため、午前零時に開式するのが世界標準になっていますが、わが国の教会では夜間に祈祷を行うのはどうしても無理があると私は考えています。

夜間の騒音のために近隣対策が必要ということもありますが、それ以上に教会に参祷するのは高齢者が多いというのがその理由です。高齢者は都会と地方とを問わず、自分で運転できず、公共交通機関でないと出かけられない人が少なくないし(つまり深夜は物理的に参祷できない)、そもそも深夜の長時間の参祷自体が高齢者の健康面でハードなものとなります。

教会は神父の自己満足のためにあるのではなく、信徒あっての存在だと思っていますので、信徒が教会に来られなくては本末転倒です。そのため、私は司祭に叙聖されて以来、自分が司祷する復活大祭の祈祷は日曜日の朝にしています。

 

今朝の鹿児島は昨日から続く大雨で、教会の敷地が沼のようになりましたが、嬉しいことに普段より多い参祷者がありました。

10時の開式を前に、信徒が持参したイースターエッグが用意した台の上に並べられました。

信徒が持参したイースターエッグなど

復活大祭の祈祷は、聖堂の周りを十字行(行列)して始まりますが、さすがに大雨なのでそれはカットしました。

また、十字行を始める前の夜半課という祈祷で、聖堂に安置してある寝りの聖像を至聖所に移し、宝座(祭壇)の上に置きます。これは「キリストは復活してもはや墓にいない」ことを象るものです。しかし、今回は十字行をしないので夜半課もカットして、聖像をダイレクトに宝座に移してしまいました。

宝座(祭壇)に移された寝りの聖像

 

聖体礼儀では、主の復活の福音(喜ばしい知らせ)が全世界に告げ知らされたことの象りとして、福音書の同じ個所(ヨハネ1:1-17)を可能な限り世界各国語で朗読することが求められています。

鹿児島教会には米国とルーマニア出身の信徒がいますので、彼らにそれぞれ英語とルーマニア語福音書を読んでもらいました。もちろん日本語は日本人である私の朗読です。

三か国語で福音書を朗読

祈祷の終わりに、イースターエッグなどを成聖(聖水をかけて祝福すること)しました。

イースターエッグの成聖

キリストの復活は、それを信じる私たちも復活し、永遠の生命を獲得することを示したという意味において、「天国とこの世を繋ぐ出来事」と理解しています。それを示すために、復活大祭ではイコノスタスの中央の門「王門」を開けたままで祈祷を行い、さらに祈祷後も閉めずに光明週間(復活大祭から1週間)の間は開放します。

もっとも鹿児島教会に次に来るのは一か月後なので、帰宅する時に王門は閉めてしまいましたが…

祈祷後も開放されたままの王門

鹿児島を出発して人吉に戻った後は、まず人吉教会に寄りました。

金曜日に鹿児島に発ったので、人吉の聖堂内はまだ「大斎モード」のままだったからです。

人吉での復活祭に備えて、妻と聖堂内の黒い布を白や金色の布に交換し、寝りの聖像を保管場所から出して宝座の上に置きました。

人吉の聖堂を復活祭に向けて設営

 

夕刻にようやく帰宅し、断肉の主日以来8週間ぶりに焼肉を食べて、わが家のプライベートな復活祭のお祝いをしました!

もっとも、明後日から二泊三日で長崎、週末は四泊五日で福岡に出張するので、休まる時がないのですが…