私は高校に入って部活動でバイオリンを始め、卒業と同時に止めてしまいましたが、昨年から40年ぶりにバイオリンを再開したことは以前書きました。
今日でレッスンを始めてから1年となります。
再開した時は完全にズブの素人に戻っていましたが(そもそも、元々上手くありませんでしたが)、1年経ってだいぶ感覚が蘇ってきました。
バイオリンはあくまでも個人で楽しむための趣味のつもりでしたが、多少弾けるようになるとちょっと図々しくなり、いろいろ演奏してみたくなるものです。
たまたま昨年末、人吉市から十数㎞ほど離れた球磨郡あさぎり町で活動している弦楽合奏団があることを知りました。「弦楽アンサンブル楓」という名です。
定演などはなく、学校行事や福祉施設などでのボランティア演奏を主体にしているようです。
しかも偶然ですが、団長のA氏は私が知っている人だったのです!
A氏は相良村の開業医で、お母様が人吉ハリストス正教会のO執事長の叔母に当たります。お母様は幼児洗礼の正教徒でしたが、ちょうど3年前に亡くなり、私が葬儀を執り行っています。(A氏や他のご家族は信徒ではありません)
それでA氏への年賀状に「楓」に関心があると書いたところ、大歓迎との連絡をいただいたので、一昨日に練習場所のあさぎり町の公民館に楽器持参で行きました。
いまの団員は全部で10人ですが、弦楽五部(バイオリン第一と第二、ビオラ、チェロ、コントラバス)の全パートが揃っています。
「まずは一緒に弾きましょう」ということで、第二バイオリンのA氏の隣で楽譜を見せてもらい、早速練習に参加しました。
皆さん、人吉球磨のような田舎のどこで楽器を習ったのかと思うくらい上手で驚きました。私は楽譜が初見であること以前に、いまの自分の技術レベルでは少し難易度が高い楽曲だったので、ついていくのがやっとでしたが、今後の練習のしがいがあるというものです。
これから毎週月曜日の練習に通うのが楽しみです。
さて大学入学後、私は「早稲田大学グリークラブ」に入り、合唱を始めました。
社会人になってからは、前職時代も神学校に入った後も忙しく、合唱はそれこそ教会の聖歌隊でしか歌う機会がありませんでした。
しかし、50代になってから時間に余裕ができてきたので(神父としての仕事量は変わらないので、時間の使い方が上手くなったのでしょう)、一般の合唱団に参加するようになりました。もちろん、あくまでも趣味です。
正教会の典礼は事実上、アカペラの小さなオラトリオみたいな形態なので、「教会で散々歌っているのに、神父が何でわざわざ教会の外に行って合唱をするのか」と言われたことがあります。しかし、私は聖職者としてであれ聖歌隊員としてであれ、教会で聖歌を奉唱することは、たとえそれがどんなに美しくて魅力的な合唱曲だとしても「祈り」であって、決して「趣味」ではないと考えています。つまり同じ合唱という行為であっても祈りは祈り、趣味は趣味であり、きちんと区別した上でどちらも真剣にやりたいと思っているのです。
以前見た統計に、社会人で合唱をしている人の人口比率は首都圏と関西の都市部に極端に集中していることが示されていました。つまり、そういう都会には社会人の合唱団がたくさんあり、より取り見取りの環境だが、地方では逆に大人の合唱団はあまり一般的ではないということです。
実際、人吉に来て、継続的に活動している合唱団がないと知った時は驚きました。
それで九州でも本格的に合唱を続けたかった私は、着任して間もなくの2020年1月、福岡の「九響合唱団」のオーディションを受けて入団しました。これはプロオーケストラの九州交響楽団(九響)の付属合唱団です。
練習に通うには福岡まで片道2時間半かかり、高速代もバカにならないのですが、それを惜しんでは合唱ができないのだから仕方ありません。
しかし、そのように苦労して参加したのも束の間、コロナ禍のため出演予定の九響の演奏会が次々と中止になってしまいました。高速代を返せとコロナウイルスに言いたい気持ちです。
ようやく昨年の10月と11月、福岡で九響の演奏会に出演でき、九州に来てから三年かかって舞台上でのリアルな合唱を経験しました。心から嬉しく思いました。
さてその演奏会と同時期、鹿児島教会の信徒から、鹿児島の音大に合唱団があるという話を聞きました。
ネットで調べてみると、それは鹿児島国際大学(単科の音大ではなく、音楽科のある総合大学)の学内の合唱団で、しかも昨年から学外の一般団員も公募していることが分かりました。
ドイツ人声楽家のウーヴェ・ハイルマン氏が指導している「ハイルマン合唱団」という団体です。
ハイルマン合唱団 (@iuk_music) / Twitter
学内メインのためか、ネット上で公開情報があまり更新されていなかったので、昨年末に入団の可否についてメールで照会したところ、ハイルマン先生から直接電話がかかってきて、歓迎しますとのことでした。
練習は火曜日ですが、これまで出張や葬儀などの公務が重なったため、昨日ようやく初参加しました。演目はバッハ作曲「マタイ受難曲」です。
鹿児島国際大学のキャンパス内の練習場所に来てみると、集まったのは30人ほどで、大部分は音楽科の学生でした。中年の方も若干いましたが、教職員だったようです。学外、それも鹿児島県外から来て、さらに学生諸君の父兄よりも年長であろう私にはもの凄いアウェイ感でした…
練習日程を見ると、昨年末から始めて3月の本番まで10回足らずしかなく、マタイ受難曲のような超大曲なのにどうするのかと思ったら、学内で毎年演奏しているようです。つまり「みんなが歌える曲」ということですね。
ソリストは声楽専攻の学生に割り振られていました。ハイルマン先生の練習内容も合唱に対してよりも、ソリストの学生に対する歌唱指導の方が中心でした。
また合唱団とは別に、オケも器楽専攻の学生と教員で編成されているそうです。
どうやらこの団体は趣味のサークルというより、音楽科の教育の一環として運営されているように思われましたが(よって会費も演奏会のチケットノルマもない)、前述のように「本格的に合唱を続けたい」私には願ったりかなったりです。
しかも福岡より鹿児島の方が断然近く、高速代も安く済みます!
以上の結果、趣味に関しては今後毎週月曜日にあさぎり町で弦楽合奏、火曜日に鹿児島で合唱、水曜日にバイオリンの個人レッスンというスケジュールになりました。九響の方は12月の本番に向けて、夏に練習が再開されるので、それが始まったら福岡に行く機会がさらにプラスされます。
音楽という趣味を続けるには、首都圏に住んでいた時と比べるとだいぶハードルが高いのですが(神父なので本番が日曜日なら辞退することは従来どおり)、仕事と趣味を両立させて充実した日々を過ごしたいと思っています。