九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

ベートーヴェンの誕生日に~たくさんの音楽との思い出

今朝の人吉の最低気温は氷点下3℃。最高気温は連日、5℃前後です。空は晴れていても、凍てつくような毎日です。

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今朝の人吉。氷点下3℃

 

さて今日はベートーヴェンの250回目の誕生日です。

 

私はクラシック音楽を聴くのが趣味なのですが、それを決定づけたのが1975年3月のカール・ベームウィーン・フィル・ハーモニー管弦楽団(VPO)の来日でした。

この時はNHKが連日、演奏を放送したのですが、当時小学生だった私は、ステレオ放送などない時代だったのに、テレビの前で演奏に釘付けになりました。

ベームとVPOはいろいろな演目をやりましたが、ベートーヴェン交響曲第七番は神がかった名演で、私はそれを聴いてクラシック音楽の虜になったと言っても過言ではありません。この時の演奏は今も脳裏に焼き付いています。(YouTubeから当時の演奏を添付)

ちなみに、私はベートーヴェンの九つの交響曲の中ではこの第七番が最高傑作だと思っています。


貝姆指揮貝多芬第七交嚮曲 (東京) Beethoven Symphony No.7, Karl Böhm

 

私の家は音楽には無関心で、同級生には女子はもちろん、男子でもピアノやヴァイオリンを習っている子が多くいましたが、私は「音楽を習うなんて金の無駄」と言われて、小学校でも中学校でも楽器の習い事は一切させてもらえず、もっぱら家で聴くだけでした。

中学校に吹奏楽部はありましたが、部員は全員女子だったので恥ずかしくて入部を断念。また中学校の合唱部は東京都でコンクール上位入賞の常連でしたが、私が関心があったのはオーケストラ演奏であり、合唱部には全く興味がなかったので入りませんでした。

 

高校は私立男子校で、文化部も運動部も実にたくさんの部活がありました。吹奏楽部の他に弦楽の「室内合奏団」もあり、ヴァイオリンをやってみたかった私はそこに入団。ヴァイオリンの練習を始めました。音楽なんて金の無駄と言っていた親も、学校の部活だからという「錦の御旗」には何も言えませんでした。

 その弦楽オケではバッハを筆頭に、ヘンデルやヴィヴァルディらのバロック音楽作品ばかりを演奏していましたが、漫然と聴いていた音楽も自分で演奏してみるとさらに面白くなりました。おかげでバロック音楽や、室内楽作品は自分の好きなジャンルになりました。

 

ベートーヴェン室内楽作品は自分の在学中に演奏することはありませんでしたが、聴くのは好きです。中でも彼が20代で書いた「七重奏曲・作品20」は、若さと明るさに溢れていて大好きです。


Beethoven Festival Online - Septet in E-flat major, Op. 20

 

高校の三年間、室内合奏団にいましたが、やはり他の部員は小さい時からヴァイオリンやピアノを習っていた人たちばかり。スタートが遅れていた私はどんなに練習しても、自分で満足できるレベルの演奏ができないので、卒業にあたって楽器はやめ、大学では男声合唱団「早稲田大学グリークラブ」に入りました。

 

 合唱は中学校の音楽の授業以来です。前述のとおり中学校の合唱部はレベルが高く、教師も合唱指導者として有名な先生だったので、授業も真剣度が高くはありました。しかし大学で本格的に合唱を始めてみると実に奥が深く、四年間没頭しました。

 

ベートーヴェン「第九」の合唱を初めて歌ったのも、大学のグリークラブ時代です。年末の秋山和慶先生の指揮による東京交響楽団(東響)の第九が最初だったと記憶しています。

 

大学卒業後は仕事が忙しく、合唱どころではなくなってしまいました。40代で会社を辞めて神学校に入ってからは、さらに外に出ていくことが難しくなり、合唱は「教会の中」だけで歌うものになってしまいました。もちろん聖歌だけです。

45歳で司祭になり、50代になってからだいぶ生活のリズムに余裕が出てきて、ようやく一般の合唱を再開しました。大学時代は男声合唱でしたが、初めて第九以外のクラシックの混声合唱をやってみると、これがまた楽しく、はまりました。

 大学卒業から30年以上たって、東響付属の合唱団「東響コーラス」に入団し、秋山先生の指揮で第九を再び歌うようになりましたが、これも何かのご縁でしょう。

 

そして迎えた2020年のベートーヴェン生誕250年。

ベートーヴェンの合唱の最高傑作である「ミサ・ソレムニス」を東京シティ・フィルで歌う機会ができ、入団オーディションにも合格して昨年5月から練習を始めましたが、何と突然の転勤の辞令で二か月で退団…今年2月の本番自体はまだコロナ禍が顕在化する前だったので予定通り開催され、成功したそうです。

諦めがつかず、九州に越してからも別の合唱団の入団オーディションを受け、合格して同じ「ミサ・ソレムニス」の練習に通いましたが、今度はコロナで演奏会は中止に…

 

そんなことで未練がましく(?)、今日は朝からYouTubeでいろいろな指揮者による「ミサ・ソレムニス」を聴き続けています。

この1958年の壮年期のカラヤンの演奏はとても良いので、「ミサ・ソレムニス」ってどんな曲?という方のためにYouTubeを貼っておきます。


Beethoven Missa Solemnis - (Karajan, Philharmonia Orchestra - 1958)

 

わが国では年末の「第九」演奏がどこでも恒例行事のようになっていますが、今年はその多くがやはりコロナで中止になっています。

楽聖ベートーヴェンの記念の年に本当に残念ですが、音楽演奏、とりわけ合唱は飛沫の問題でしばらく風当たりが強い状況は続くでしょう。一日も早くコロナが終息して、心置きなく音楽を楽しみたいと心から願っています。