先週、アメリカに本社のあるギリシャの船会社から、新船の船舶成聖を依頼されました。
正教会では聖堂だけでなく、家屋や乗り物などを建造した時は、持ち主や使用者の安全と幸福を祈念して成聖(Blessing)を行うことになっています。船は大きな建造物であり、海難事故を心配しなくてはなりませんから、成聖の対象物の最たるものといえます。
ギリシャは海洋王国だけあって、ギリシャ企業が所有する船は多く、それらの進水にあたっては当然ながら正教会式でセレモニーを行うことになります。
九州には造船所が何か所もあるためか、着任して3年しか経たないのに、もう既に船舶成聖は3回も執り行っています。
今回のミッションはかなり大掛かりで、まず今日、熊本県長洲町のジャパン・マリン・ユナイテッド(JMU)で建造された船を成聖。続いて今週の金曜日に愛媛県西条市の今治造船で建造された姉妹船を成聖するというものです。どちらの成聖式も船会社のCEOをはじめ、役員がアメリカから来日して出席するとの話でした。
過去に引き受けた成聖式では「自分で縄ばしごを昇って、祈祷して来てください」といった、ほとんど下請け業者の作業員のような扱いでしたが、今回の船会社はお偉方が出席するセレモニーという位置づけのためか、だいぶ丁寧な待遇です。
今日訪ねたJMUの造船所は、同じ熊本県内とはいえ、人吉からは130㎞以上離れており、車で片道2時間かかります。
改めて、熊本県は大きいなと実感します。人吉が県内の一番外れにあるからですが…
造船所の敷地内は大変広いので、目標の船がある位置を事前に確認しておかないと、たちまち迷子になってしまいます。
今回は、船体に船名が大きく書いてあったので、すぐにたどり着きました!
JMUの社員にブリッジへ案内してもらい、祈祷の設営。
オーナー企業のお偉方の到着を待ちます。
アメリカから到着したCEOは60代くらいのギリシャ系の女性。他の役員もみなギリシャ系らしく、互いの会話はギリシャ語でした。
一応、祈祷は日本語で行うが、ギリシャで行われているのと同じ、正教会の正しいスタイルである旨を言ってから(ギリシャ語はできないので英語で)、祈祷を始めました。
彼らは初めて見る日本人の正教会司祭と日本語の祈祷に興味津々だったようです。
本来、船内の全ての部屋に聖水を撒かなくてはならず、通常は1時間くらいかかるのですが、お偉方はレセプション会場にすぐ行かなくてはならないということで、CEOの横にくっついて歩きながら、彼らの見学場所だけに聖水を撒き、30分ほどで終えました。
今日の第一回は無事終了。金曜日の第二回成聖式は福岡空港から愛媛県まで日帰り出張となります。もっとも今週末は熊本巡回日のため、福岡から人吉まで戻ると時間と高速料金のロスになるので、金曜日は福岡、土曜日は熊本に泊まるのですが。
教会活動というより、巡業みたいです。しかし、知らない場所に行って新しい経験をすることは好きですから、全く苦になりません。
初めての四国出張、今から楽しみです。