九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

豪雨の中での船舶成聖式

出張先の東京から11日(火)に戻りました。

東京には先週の木曜日から6日間いたのですが、連日カンカン照りで大変な暑さでした。もう梅雨明けしているのではないかと思ったくらいです。

九州はずっと雨が続いていて、7月になってからほとんど太陽を見ていなかったので、別の国に来たようでした。

特に福岡県や大分県などの九州北部地域では大変な豪雨災害になっています。

東京では現地の信者さんたちが口々に「九州は大変なことになっていますね。グレゴリー神父さんが被災したんじゃないかって、心配で心配で」などとおっしゃるのですが、私がいる九州南部の雨は全く大したことがないので、申し訳ないくらいに思いました。

 

さて、九州に戻った翌日の12日(水)は、朝から早速お勤めです。

いつもお馴染みの造船所である長洲町のジャパン・マリン・ユナイテッド(JMU有明事業所で、ギリシャ船の船舶成聖式を執り行いました。

 

朝10時半に対象の船に乗り、中で待機しているようにとの指示でした。

現地は福岡県との県境近くで人吉からは2時間近くかかるので、朝8時半に出発。人吉の天気は曇りでした。

車を走らせて造船所に近づくと、猛烈な大雨が降り出しました。雷も鳴り響いています。天気予報では「曇り」だったのですが…

同じ熊本県内なのに、ここは豪雨が続いている「九州北部」なんだと改めて思い知らされました。

 

岸壁のテントの下で雨が小やみになるのを待ちましたが、まったく収まる気配がありません。

造船所は大雨

あきらめて船内に入り、操舵室で祈祷の設営をしました。

操舵室からの眺め。雨はひどくなる一方

 

1時間ほどしてギリシャから来たオーナーら、来賓が到着。

通常は岸壁で命名式と呼ばれる式典を行い、それから来賓たちが操舵室に上がってきて、そこで成聖祈祷を行い、聖水を船内の各所に振りかけて回ります。

ちなみに聖水はヒソップという、毛の長いブラシにつけて対象物に振りかけます。これはもともと、細い木の枝を束ねて用いていたことに由来する器物です。

しかし、今回は傘を差してもずぶ濡れになるような大雨だったので、セレブな来賓たちを濡らさないようにということで、命名式が行われている岸壁のテントのところまで降りてきて、そこで成聖祈祷をするようにと連絡が来ました。

始めから分かっていれば乗船しなかったのに、とは思いましたが、施主様のご指示ですから仕方ありません。横殴りの雨の中を下船しました。

 

来賓のいるテントにイコンなどを並べて祈祷したのですが、船から離れた場所なので聖水を直接かけることができません。

そこで祈祷を始める前に次のようにスピーチをしました。ギリシャ語は話せないので英語です。

 

「私たち日本人は古くから『雨は大地を固くする』(=雨降って地固まる)と言います。これが意味するのは、困難は私たちを強めるので、結果として幸運な将来をもたらすということです。今日、私たちは嵐の中にいますが、私たちの祈りを通して全能の神がこの雨を聖水に変え、この船を幾とせも祝福してくださるように願いましょう」

 

そして祈祷の最後に聖水を撒く場面では、上記のヒソップを使わずに、雨の中を出て行ってペットボトルに入った聖水を船の方に向かって思いきりぶちまけました。

ギリシャ人の来賓たちには大ウケで、歓声が上がりました。

 

とんでもない悪天候で、そこにいた誰もがうんざりしている雰囲気だったのですが、そんな気持ちで神に祈りを献じるのは良くないことです。

せめてグレゴリー神父が一生懸命に祈ってくれたと、外国から来た来賓に言葉ではなく(そもそもギリシャ語はできない)アクションで分かってもらえればと思った次第です。

 

ともあれ、成聖祈祷を無事に終え、人吉に戻りました。

熊本市を過ぎると雨雲を抜けてしまったのか、雨はやんでしまいました…

これからは雨がこれ以上被害をもたらさないように、それこそ神に祈りたいと思っています。