九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

広島県三原で船舶成聖式

今日は広島県三原市今治造船広島工場で船舶成聖式を執り行いました。

 

朝、送迎のタクシーで今治造船に到着。指定された時刻より少し早く、7時55分頃に着いたのですが、午前8時にならないと敷地に立入り不可とのことで閉まった門の前で待ちました。なかなかルールに厳格です。

門の向こうでは工員の方たちが総出でラジオ体操をしていました。数百人のラジオ体操というのもなかなか壮観です。

今治造船広島工場の正門

 

新船の名称は「ナヴィオス・アルテア」。昨年9月に愛媛県で成聖した船と同一のギリシャ系企業の持ち船です。

新船「ナヴィオス・アルテア」

船内に入ったのは8時過ぎで、成聖式は10時過ぎとの話でしたので、2時間もどうやって暇をつぶそうかと考えていましたが、今治造船の総務のSさんが私のお付き担当(?)だったようで、Sさんの案内で船上から事業所を見学させてもらいました。

船上からの事業所の景色

事業所の事務所(左手の黒い建物)と工員寮(左奥の白いビル)

 

Sさんは地元の信用金庫から今治造船に転職した方で、金融関係の営業部門からの転職組ということでは私もある意味同じなので、話が合いました。

Sさんの本来の職務は人事とのこと。採用活動で西日本各地の工業高校で会社説明会をやっているそうですが、造船業はいわゆる3K業界というイメージがあり、なかなか採用が難しいそうです。しかし、今の造船業界は安全対策にも労務管理にも注意を払っており、実際はかなりホワイトな業界だそうです。「金融や保険の営業の方がよっぽど3Kですよね」と突っ込んだら、大いに同意されました(笑)。

また船上から見えた高層マンションのような工員寮には、コロナ禍前まで中国人の工員が400人以上入居して働いていたのですが、コロナでほとんどが帰国してしまい、さらに今は中国の方が雇用条件が良くなっているそうで、三原に戻って来なくなってしまったとのこと。そのため今は人手不足に悩まされているそうです。

そんな調子で仕事の話や家族の話など、Sさんと世間話をしていたらあっという間に2時間経ってしまいました。

 

午前10時過ぎ、岸壁で行われていた命名式(メーカーから船主への引き渡し式)が終わって、来賓たちが船に上がってきました。

命名

ブリッジ(操舵室)に来賓が集まるのを待って成聖祈祷を執行。

祈祷文は日本語ですが、正教会式で船舶成聖をするとしたら、船主はギリシャ系と相場が決まっていますので、ギリシャ語で言える祈り(主の祈りなど)は極力ギリシャ語を使うようにしています。

 

通常は成聖祈祷が終わったらお役御免なのですが、今回は船が出航するので来賓たちと見送りにも立ち会ってほしいと言われました。

新船の出航式

錨を上げて」が演奏されている中を、巨大な船が離れていきます。

以前は横浜に住んでいたのに、このように絵に描いたような出航シーンをこれまで見たことがなかったので、感動的でした。

 

式典が終わって今治造船を後にし、送迎タクシーで正午に三原駅に到着。

新幹線が来るまで30分ほどあったので、昨日駅から見て気になっていた三原城址に寄ってみることにしました。

何といっても戦国の名将・小早川隆景の居城です。

 

何と駅に城跡に出る専用出口がありました。

三原駅の城跡口

駅から出るとすぐに石段があり、昇ったところが天守台跡でした。

期待した割には何の変哲もない公園で、ちょっと拍子抜けしました…

原城

さて、昨年9月からの7か月で6回目の船舶成聖となりました。来月も復活祭後に常連(?)のJMU有明事業所(熊本県長洲町)で予定しています。

今治造船のSさんも言っていましたが、船一隻造るのに実に多くの企業と人の手がかかっています。まさに造船は人間の努力の結晶といっても良いでしょう。

そういう船の誕生にあたって、祈りというちょっとイレギュラーな立場とはいえ、関わらせていただけるのは幸せなことだと思っています。