つまり鹿児島県人から神のように敬われている維新の元勲・西郷隆盛の命日でもあります。(墓の写真は以前撮影)
それと直接関係なく、全くの偶然ですが、今日は鹿児島ハリストス正教会への巡回日でした。
昨日の夕方に鹿児島に着いて、聖堂内の設営。
至聖所のエアコンが壊れていて、先月は分厚い祭服で蒸し焼きになりそうになりながら祈祷しましたが、新しいエアコンの設置が今回の巡回に間に合いました。
もうすぐ10月なのに今も最高気温は連日30℃を超えているので、一安心です。
今回の聖体礼儀はイエスの母マリヤの誕生を記念する生神女誕生祭(祭日は9月21日)を繰り下げて行うことにしました。
祭日には聖堂の中央にその祭日のイコンを置くのが正教会の伝統ですので、鹿児島教会に備付けの生神女誕生祭のイコンを置きました。
19世紀のロシアで印刷されたイコンです。本格的なイコンは板に描かれていますが、これは紙製なので額縁に入っています。古くて貴重なものなのに、見かけの印象が若干チープなのが残念に思っています。
さて、今日は鹿児島市内で絵画教室を開いているKさんから、「クロスターアルバイテン」によるイコンの額装を献納していただきました。
クロスターアルバイテン(Klosterarbeiten)とはドイツ語で、直訳すれば「修道院の仕事」という意味ですが、15世紀のヨーロッパのカトリック修道院で始まった聖画や聖器物の装飾のことです。つまりキリスト教美術のジャンルの一つです。
Kさんはクリスチャンではありませんが、お仕事柄イコンにも関心を持っておられ、鹿児島教会に参祷されるようになりました。
そして先月、ご自分の作品を見本として持参され、イコンを提供してくれればそれを額装して献納したいと申し出てくれました。
ありがたいお申し出なので、私の手持ちの紙製イコンを差し上げたところ、早速制作して今日持って来てくれました。
イコン自体は海外の教会や修道院の売店にある、一枚数十円程度のものですが、見違えるようにゴージャスで美しくなりました。
参祷者の皆さんに見てもらえるよう、聖堂入口の受付スペースの壁にかけました。
今回の額装イコンは第一号ということで、Kさんは今後さらに制作して人吉など他の教会にも献納したいと言ってくださっています。重ね重ね、ありがたく思います。
こういうことに対して「イコンは観賞用の絵画ではない」「イコンは描かれたものに意味があるのであって額縁に値打ちはない」、さらには「洗礼も受けていない人がイコンを扱うのはおかしい」「カトリックの美術を正教会に持ってくるのは場違い」等々、ネガティブで批判的なとらえ方をする人も少なくないと思います。
もちろん、イコンは観賞用の絵画ではないし、額縁でなく描かれたものに意味があるというのは正しい考えであり、間違っていません。
しかし、神学的な理屈を超えてそこにあるイコンを大切にしよう、そのために誰が見ても美しくしようという、人間の持つ根源的な「神聖さへの畏敬の念」をまず第一に尊重できなければ、何のための宗教かと私は考えます。宗教とは学問のためにあるのではなく、人の心のためにあるのですから。
その意味で、Kさんの作品としての額装はもちろん美しいのですが、洗礼も受けていないのにイコンと出会って魅せられ、それを少しでも美しくしたいと、それもビジネスでなく善意で思うKさんの心が何より美しいと思います。
そのようなわけで、これからもKさんの作品を楽しみにしています。