九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

主の昇天祭 九州大学の皆さんとともに

今週の月曜日、5月29日にわが九州北部が梅雨入りしました。

人吉市は鹿児島との県境に位置しているので、どう見てもここは九州北部ではなくて南部じゃないのかと思うのですが、気象庁の定義では「熊本県は九州北部」ということのようです。住民の感覚として納得がいかないですが…

いずれにせよ、関東育ちの自分には5月に梅雨入りなんて驚きです。

 

さて、この間の日曜日は人吉ハリストス正教会で主の昇天祭を執り行いました。

主の昇天祭とは、キリストが復活して40日目に昇天したこと(ルカ24章、使徒1章)を記念する祭です。復活祭に次ぐ12の祭「十二大祭」の一つに位置付けられている、重要な祭日です。

復活祭は必ず日曜日と決まっていますから、復活祭から40日目の昇天祭も木曜日と決まっています。

しかし、こちらでは平日に教会に来る人は滅多にいませんので、聖体礼儀を日曜日に振替えました。

主の昇天祭 聖体礼儀


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この日は九州大学文学部の比較宗教学研究室の飯嶋教授と高橋講師、および17人の学生が参祷しました。ちなみに高橋講師は正教会、特にウクライナ正教会の研究者で、福岡伝道所の所属信徒です。

この研究室では今年度、九州の正教会をテーマに調査研究を行う計画で、最初の訪問教会として人吉に来会されました。

正教会の研究といっても、よくありがちな聖堂やイコン、また昔の人物伝などを調べるのではなく、実際に九州の教会に来ている人々の「ライフステージ」についてヒアリングし、その人の人生と正教信仰との関りについて検証していくというものだそうです。いわゆる広義の「フィールドワーク」です。

 

考えてみれば、日本語で「教会」と呼んでいる言葉の原語は、ギリシャ語で「集められた(者)」を意味する「エクリシア」です。

つまり教会とは本来、建物を指しているのではなく、そこに集う人々のことを指しているのです。

極論すれば、いくら大きな聖堂、あるいは国宝・重文に指定されているような文化財的価値のある聖堂であっても、そこに通ってくる信者がいなければ、ただの見世物であって教会ではないということです。

その意味ではこの度の九州大学の研究は、教会という存在の本質をとらえたものであり、感心しています。自分も九州大学の大学院を受験して、この研究室に入りたいくらいです。まあ無理ですが(笑)。

 

聖体礼儀の後、教授や学生の皆さんと談笑しながら昼食を食べ、13時から15時までの2時間、私と信徒たちが学生さんたちからヒアリングを受けました。

私については「洗礼を受けた動機」「正教会に改宗した経緯」「聖職を志した理由」、それに加えて趣味や日常生活のことなどです。

この日、私を含めた人吉教会所属員は6人しかいませんでしたが、内訳は幼児洗礼者2名、信徒との結婚を機に受洗した者1名、啓蒙者(定期的に教会に通っているがまだ洗礼に至っていない者)1名、さらに私たち夫婦は帰正者(他のキリスト教会から正教会への改宗者)でした。

そのため、調査対象の人数が少なかったにも関わらず、各自の入信の背景がバラエティーに富んでいたため、有意義なヒアリングができたようで、皆さん喜んでいました。

 

今後、他地域の信徒にもヒアリングが行われる予定ですが、彼らの研究の進展を私も楽しみにしています。