九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

コロナ感染疑惑騒動

早いもので年が明けて1か月経ちました。

 

昨夜、人吉教会の役員をしている信徒のOさんから、97歳のお父様が永眠されたと電話がありました。家族とは同居しているのですが、入浴中に急死されたのです。

私も着任直後の2019年秋に、川辺川のほとりのご自宅まで挨拶に行きましたが、当時95歳になる直前だったにもかかわらず、矍鑠としていて80代前半くらいにしか見えない若々しさでした。ゴルフが大好きで、90歳を過ぎてもプレーしていたそうです。

人吉は自然環境も食べ物も良いせいか、元気な高齢者が大変多く、その方もその一人でした。

しかし、一昨年7月の豪雨災害では、ご自宅の一階が水没し、二階に逃れて九死に一生を得られました。その後、人吉市内の親戚宅でしばらく避難生活し、真新しく修繕された自宅に戻って平穏に暮らしていたそうです。

年齢的にはいつお迎えが来てもおかしくないのですが、それにしても全く突然なので私も驚きました。

いずれにせよ永眠直後だし、もう夜なので葬儀の日程などについては翌朝話し合いましょう、ということで電話を置きました。

 

しかし、気になることがありました。

同居している娘が、夜になって急に38℃の熱を発したのです。

彼女は妻と同じ保育園で働いていますので、もしコロナだったとしたら園内の感染拡大のリスクがあり、大変なことになります。コロナもインフルエンザも、ワクチン接種済みなのですが。

しかし、普段は職場と自宅を往復しているだけですし、彼女の仕事は給食の調理員ですから、職場でマスクを外すことはなく終始ほぼ無言です。他の外出もスーパーに買い物に行くくらい。昼食は帰宅してからなので外食は一切していません。よってコロナだとしたら、どこで感染したのか全く見当がつかないのです。

 

想像をめぐらしたところで何も解決しないので、とりあえず自室で寝ていてもらうことにしました。

 

朝になると娘の熱は39℃近くまで上昇。

急いで保育園に連絡して状況を説明し、朝一番で発熱外来を受診して結果を報告することになりました。もちろん娘も妻も欠勤です。

娘はかかりつけ医などないので、県庁の発熱外来照会窓口に電話しましたが、何度電話しても9時になるまで繋がりませんでした。そうだ、ここは役所だったと思うと苦笑するばかりです…

 

そうこうしているうちにOさんから電話がかかってきました。葬儀の日程はすぐに決まりましたが、いずれにせよ業者を交えての事前打ち合わせは必須なので、今日葬儀場に行くアポを取りました。

しかし、娘がもしコロナに感染していたら私も濃厚接触者に該当するので、葬儀を執り行うどころか、今日打合せに行くことすらできなくなります。

隠すのは意味がないことなので、娘の状況を説明して、もしコロナだったら今後どうするか、改めて話し合うことにしました。

 

改めて、と言っても九州に神父は私一人しかいないし、教区事務局の京都教会に連絡して応援を要請しようにも、他の司祭はみな関西以遠です。博多か、せいぜい熊本市内など、新幹線で関西から来られる場所ならともかく、鉄道が通っていない人吉に本州から来るには、飛行機で鹿児島空港まで来て、あとは車か高速バスで移動するしかありません。実質的に海外駐在員と同じです。

つまり応援を頼むのも無理となれば、葬儀自体をギブアップして火葬場でお骨にしてもらい、後日何らかの形でお祈りをするしか選択肢がないことになります。

自分の教会の信徒の最後に関わることができないなんて、管轄司祭のいる意味がありません…

 

娘は県からコロナ発熱外来に指定された医院へ。たまたま、我が家から一番近いクリニックでした。

コロナやインフルエンザだけでなく、様々な検査を受けたようで、2時間近く帰りを待ちました。

結果は…陰性でした!ただの風邪です。全身の力が抜けました。

 

そのようなことで、今日はアポ通り、14時に葬儀場を訪問して故人の臨終の祈りを執り行い、葬儀の打合せも済ませました。

当地は田舎なので、都会のように「コロナ禍だから家族だけで密葬」とはならず、いろいろな方面にお知らせしないといけないとのこと。しかし、だからといって従来のように町内会を挙げて何十人も参列するような葬儀はコロナ対策上できないため、僧侶の読経が行われている時間帯だけは家族のみが集まり、その前後の時間帯(約1時間程度)は五月雨式に一般の弔問客を受け付けるスタイルになっているそうです。

キリスト教は祈祷に出席してナンボなのであり、仏式のようにご霊前で焼香して帰ればOKというわけにはいかないのですが、郷に入っては郷に従えです。

結局、私自身は一般弔問タイムが終わるまで待機していなくてはならないので、埋葬式当日は朝から夕方まで半日がかりです。

 

しかし、娘がコロナに感染していなかったことが分かり、故人のためにしっかりお祈りしてお見送りすることができるので、管轄司祭としての責任が果たせて安堵しています。

 

打合わせの後、葬儀で必要な物品を取りに人吉教会に行きました。

以前、敷地内に執事長が挿し木したネコヤナギの枝を植えたのですが、それが知らない間に成長し、花をつけていました。

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花をつけたネコヤナギ

人吉は連日寒い日が続き、今朝も氷点下でしたが、春は確実に近づいているようです。