人吉市と湯前町を結ぶくま川鉄道は、昨年7月4日の水害で壊滅的な打撃を受け、運休が続いていました。
元々、大変な赤字路線でしたので、このまま廃線になってしまうのではないかと心配しました。
しかし、乗客の大部分は人吉球磨地域の高校の生徒であり、鉄道の不通で保護者が車で毎日学校に送らざるを得なくなって、困っているお宅がたくさん発生したと聞きました。そこで、一日も早い復旧に役立ててもらおうと、人吉ハリストス正教会に集まった支援金の一部を鉄道会社に寄付するなどしました。
しかしこの間の日曜日、11月28日に錦町の肥後西村駅と終点の湯前駅の間が運行再開されました。予想以上に早い復旧で驚きました。
出発進行!くま川鉄道 一部区間で運行再開 豪雨被災から1年5カ月ぶり | 2021/11/28 19:23 - 熊本日日新聞https://t.co/giNmVsVmLU#熊本のニュース #熊本日日新聞 #熊日 #熊本 #熊本豪雨 #くま川鉄道
— 熊本日日新聞社 (@KUMANICHIs) 2021年11月28日
寄付をしたからでしょうか、先月中ごろに鉄道会社の社長名で開通記念列車の乗車証が、教会の代表者である私あてに届きました。
是非にも駆け付けたい気持ちで一杯でしたが、その日は鹿児島巡回が決まっています。さすがに神父が日曜日の聖体礼儀をサボることは許されないので、教会の役員に案内状を渡して、代理で行ってもらいました。
新聞記事にもありますが、開通式には国交相に加えて地元選出の金子総務相も出席し、大変盛大なものだったようです。
そのようなわけで、くま川鉄道復活の歴史的瞬間に立ち会えず、残念な思いをしたので、今日折り返し駅の肥後西村駅まで列車を実際に見に行きました。ちなみにダイヤは高校の通学時間に合わせて朝と夕方だけ、1日6往復しか運行されていません。
列車の到着の直前、人吉から来た代行運転のバスが3台到着。無人駅でガランとしていたホームが、たちまち高校生たちで埋め尽くされました。おそらく人吉市内の高校(人吉高校と球磨工業の2校)に通っていて、球磨郡の町村の自宅に帰る生徒たちでしょう。
そこへ三両編成の列車が到着。感動しました!
球磨郡の高校から帰る生徒たちが大量に降りてきて、ホームにいた生徒たちと入れ替わりました。まさにラッシュアワーです。
降りた生徒たちは、折り返しで人吉に向かう代行バスに乗って行きました。
私自身は高校時代は自転車通学でしたし、そもそも東京の朝夕の電車は学生以上に通勤客がギッシリと乗っているので、このように通学の高校生だけが貸切電車のように、鉄道車両の一編成全てを独占しているという光景は見たことがありません。
彼らは通っている高校は違っても、毎日同じ列車で一緒になっているわけです。それで友達になったり誰かに片想いしたりと、青春のいろいろな思い出がくま川鉄道で生まれてきたのかも知れないな、と思いました。田舎ならではのことかも知れません。
その意味で、通学の足が復活して便利になった、保護者の負担が減ったという実利面ももちろんですが、それ以上に水害から復旧した鉄道に再び乗れるようになったことで、高校生たち自身の気持ちが前向きで希望のあるものになったのではないかと思わずにはいられませんでした。
駅のホームから列車が来たのと反対方向を見ると、線路に車止めがしてあって、そこから先は荒れ果てた眺めが続いています。
ここと人吉との間の球磨川を渡る鉄橋が流失し、現時点では再建の見通しは立っていません。よって人吉への鉄道の通行もいつ再開できるか分からないのです。
今鉄道を利用している生徒の在学中には難しいかも知れませんが、必ずや再び開通して、くま川鉄道が私たち被災地住民に復興への希望を与えてほしいと願い続けています。