今週末は熊本ハリストス正教会に巡回しました。
K執事長と結婚して60年近くも連れ添い、今月で米寿を迎えた妻のM子さんが来月に洗礼を受けることが決まったのですが、今日はさらに別の80代女性のOさんから洗礼の申し出がありました。
Oさんも幼児洗礼のご主人と結婚してから50年以上、熊本ハリストス正教会に熱心に通ってきたのですが、熱烈な信者だったお姑さんとの確執が過去にあったようで、洗礼を受けることだけは拒み続けていました。
ご主人は2年前に亡くなりましたが、今日になって「自分も信者として夫と同じ墓に入りたい。だから洗礼を受けたい」と初めて言ったのです。
M子さんにもOさんにも、こちらから洗礼を受けるように勧めたことは一度もないのですが、純粋に自分の意思で「自分の終末を正教徒として迎えたい」(まだお元気ですが)と決心したことに、神の導きを感じます。
そして私自身も九州に来てわずか3年で、過去数十年も洗礼をためらい続けていた人たちの入信をお手伝いすることができて、感慨深いものがあります。
さて一昨日は夏目漱石の命日だったので、昨日は漱石の足跡をたどろうと思い、彼の旧居を訪ねてみました。
漱石は旧制五高の教授だった熊本時代の4年間で6回も転居しました。その6軒の家のうち、3番目の住まいだった「大江旧居」と5番目の住まいだった「坪井旧居」の2軒だけが現存しています。
もっともそれらの家は2016年4月の熊本地震で大きな被害を受けました。坪井旧居の方はまだ修復中ですが、大江旧居は1年ほど前に修復が終わり、一般公開されています。
かつて大江旧居があった場所は、なんと熊本ハリストス正教会の隣のブロックで、教会からは100mも離れていません。しかし、今の地権者の病院の増築工事にともない、1972年に水前寺公園に移築されて今に至っています。
移築されていなければ「うちの教会は夏目漱石の家のそばですよ!」と宣伝できたのですが…
入館は無料で、内部には当時の史料が展示されています。一見の価値があります。
漱石旧居を見た後はレトロな市電に乗り、熊本城下の下町の「新町」へ。
ここにある長崎次郎書店は明治7(1874)年創業の、熊本で一番古い書店です。
今の建物は1924年に建てられ、国の有形文化財に指定されています。
江戸時代までは古物商だったそうですが、明治新政府が学校教育を導入したことにともない、教科書の販売業に商売替えし、今も店を続けています。
森鴎外はここで本を買っていたと記しているそうです。漱石自身はこの店について言及していませんが、明治時代に熊本で大きな本屋といえば長崎次郎書店と決まっていたのですから、きっと漱石もお得意さんだったに違いありません。
書店の2階は実に趣のある喫茶店になっていて、1階の書店で買った本を読めるようになっています。
私も熊本時代の漱石とラフカディオ・ハーンについて書かれた本を買って、小一時間読書を楽しみました。
歴史上の有名人と同じ空気を吸っているような感覚で、いい気分で午後のひと時を過ごすことができました。