九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

鹿児島に巡回 ハロウィンについて

先週末は鹿児島に巡回していました。

 

土曜日の朝7時に人吉を発ち、鹿児島市内の病院へ。

7月の教団の定期健診で気になる指摘を受け、もしガンだったら早期に治療しなくてはと思って、胸腹部のCTとMRI検査をくまなく受けることにしたのです。

人吉でそういった検査ができれば一番良いのですが、残念ながら十分な検査機器を備えた医療機関がありません。そこで都会の方面に巡回するタイミングに合わせて、土曜日に精密検査を受けられる病院をネットで探し、受診したものです。

画像を実際に見せてもらいながら説明を受けましたが異常なし。5万円近い出費は痛かったですが、もしお金と時間を惜しんで放置し、結局ガンで手遅れになったら、文字通りもっと痛い思いをすることになります。本当に安心しました。

 

朝、妻は勤め先の保育園のハロウィンのイベントで出勤のため同行せず、夕方に鹿児島で落ち合いました。

ガンでないことが分かったお祝いに、ホテルのそばのイタリア料理店でワインを傾けながら夕食。まん延防止期間中は夜間休業の店でしたが、外食でアルコールを飲めること自体が久しぶりだったので、健康だと分かった五臓六腑に美味しさが染み渡りました。

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妻と夕食


日曜日は鹿児島ハリストス正教会で聖体礼儀。

飛沫感染防止のため、信者は礼拝で聖歌を歌わないようにしてきましたが、10月以降鹿児島では新規感染者ゼロが続いていますので、感染リスクはほぼないと考え、歌うことをOKとしました。


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祈祷後、今年から参祷するようになったルーマニア人信徒から(鹿児島市に20年近く住んでいるのに教会の存在を知らなかったそうです…)、「日本ではハロウィンのイベントが盛んに行われているようだが、教会としてはどうなのか」と尋ねられました。

ハロウィンは日本古来の行事ではないので苦笑するばかりなのですが、そもそもハロウィンとは何かについて彼女に説明しました。

 

ハロウィン(Halloween)とは、アイルランドの古代ケルト人がキリスト教伝来以前に信じていた異教信仰に由来するものです。

彼らにとって、11月1日は冬の始まりの日であると共に1年の始まりの日であり、その前夜、つまり10月31日の夜に死者の魂がこの世に帰ってくると信じていたのです。それにあたって、人々はかがり火を焚き、動物を生贄に捧げて祭を行いました。

キリスト教アイルランドに伝わった後も、10月31日の夜にお祭をする風習は残りました。そしてアイルランド人移民によってアメリカ大陸にもたらされ、米国で「お祭り騒ぎのイベント」として発展したのです。

先祖の魂が帰って来るのでお迎えしましょう、という考えはわが国のお盆と似ており、大変興味深いのですが、天国における復活と永遠の生命を信じるキリスト教の教義では、死者の魂がこの世に帰って来るという発想自体がありません。

その意味では教会とは全く関係ない行事だと言えます。

クリスマスも本来は主の降誕、つまり目に見えない神が目に見える人間となって、私たちを救う、より具体的には信仰による天国と永遠の生命を保障するためにこの世に来たことを祝う祭です。しかし、実際はただの世間のお祭り騒ぎになっているのが現実です(この傾向も米国由来なのですが…)。ハロウィンはクリスマスと違って、キリスト教の教義とすら関りがありません。

 

ロシアなど、正教会が文化の中心となっている社会では、ハロウィンをカルト宗教的な風習として非難する動きがあるそうです。

しかし、正教会の行事としてハロウィンをするのは問題としても、教会と関係ない社会のアミューズメントまで非難したり妨害したら、それこそ教会の側が多様な文化を認めないカルト集団になってしまうと私は考えます。

要はクリスチャンかどうかは関係なく、またハロウィンだけに限らず、この年中行事はどういう意味、どういう由来か理解するとともに、羽目を外して社会に迷惑をかけないように心がけるのが(一昨年の渋谷のハロウィンは暴動のような酷いものでした)、誰にとっても一番良いことだと思っています。