九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

コロナ禍の教会~「黙祷」の勧め

今日の人吉の最低気温は氷点下3℃。しかし日中は15℃まで上がりました。

こう暖かくなるとコロナのことを忘れてしまいそうになるのですが、ずっとコロナ無風地帯だった人吉球磨地方も年末以降、散発的に新規感染者が発生しています。彼らのほとんどは現役で働いている若者から中年層であり、看護師や学校教師など、多く人と接する職種の人々も含まれています。今のところ、クラスターが発生していないため、熊本市のような爆発的な感染拡大には至っていませんが、油断は禁物だと思っています。

 

さて、教会での祈祷での飛沫感染防止のため、参祷者に聖歌を歌わせない方策がなかなかうまく行っていません。

正教会は会衆が讃美歌を歌うのではなく、少人数の聖歌隊がイコノスタシスの前で歌うスタイルが一般的です。しかし、九州ではまともに歌える人が少ないからなのか、それ以前に参祷者自体が少ないからなのか、全員に楽譜を配って、たとえ滅茶苦茶でも声を出させようとする牧会形態だったようです。

それはそれで、参祷者が祈祷中にボンヤリしているよりは、歌うことで参加意識を高める効果があるとは思います。しかし、コロナ禍で同じことを続けるのは司牧者としてためらいがあります。

 

カトリック中央協議会では昨年11月の時点で、ミサの取扱い方について感染拡大の段階別にガイドラインを策定しています。

その中に、「会衆による歌はなし(感染を防げる十分な距離を保てれば、先唱または少人数の聖歌隊による歌唱は可能)」とありますので、私もそれに倣いたいと考えているわけです。

しかし、だからといって私が祈祷中にいちいち「歌わないで静かにしてください」と言っていたら、祈祷になりません。

 

どうしたものかと思案していたら、Yahooニュースに名古屋のカレー店が「黙食」と大書したポップを店内に掲げて話題になっていると報じられていました。

要するに「食事中はしゃべらないでください」という要請を「黙食」という表示で一目でわかるメッセージにしているのです。

それを見て「あー、これだ」とひらめきました。

考えてみれば私は前職時代、生命保険会社の営業所長でしたが、営業のスローガンをいろいろ考えてポップにし、所内のあちこちに貼っていました。いちいち口頭で言うより、要点を大きく書いて目立つ場所に掲示した方が何倍も効果があるからです。

 

そこで「黙食」にならって、お祈りだから「黙祷」と書いて張り出せば良いと考えました。

ちなみに「黙食」(もくじき)とは禅宗の用語で、修行の一環として食事中は一切話してはならないことを意味しており、必ずしもそのカレー店の造語ではないと思います。もっとも「黙祷」も私の造語ではありませんが。

 

それで掲示物を作ってみました。

「黙祷」だけでは意味が通じないと思ったので、祈祷が始まってから終わるまで、聖歌者以外は黙って静かに心の中で祈ってほしいという意味で「常時黙祷」と四文字熟語(?)にしました。

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会衆の聖歌自粛を呼びかける張り紙

これと並行して、カラオケや合唱など、室内で歌うことでの飛沫感染が多く確認されていること、会衆全員で歌うことは必ずしも正教会のスタイルではないこと、普段から会衆が歌っている他の教派ですら、今は教会の中で歌うのを控えるよう指示していることなど、趣旨説明を次月号の会報に記載します。

 

ここまでやっても、もし無症状感染者が参祷していたら、教会内で他人に感染するのを完全には防げないとは思うのですが、何もやらないというのは一番まずいことです。できる限り万全を期して、教会活動を続けていきたいと考えています。