人吉の水害発生直後、ボランティア活動の中心は瓦礫の撤去や泥かきなど、力仕事が中心でした。
支援物資の需要もトイレットペーパーやミネラルウォーターなど、消耗品が求められていました。
しかし、8月になってそういった「緊急事態」の状態が一段落すると、電化製品や衣類などの一般的な家財に人々の需要が集中し始めました。
床上浸水(場所によっては1階だけでなく2階までも)した家では、電気製品が全て故障。水に浸かった衣類もヘドロの染め物のようになり、いくら洗っても除去不能なので、これも全て廃棄せざるを得ない状況です。
今は仮設住宅がだいぶ建てられ、避難生活者は体育館などの避難所からそちらに移っているのですが、仮設住宅には家具も家財もありませんから、それは自前で確保しなければなりません。
そのようなわけで、避難生活者の家財への需要はむしろ高くなっているのが現状です。
妻が現在、お手伝いさせていただいている市民ボランティアグループも、あちこちから寄付していただいた衣類や食器などを、無償で配布する活動を行っています。
現在会場にしている場所は、浸水で診療ができなくなり、取り壊しが決まった病院の建物を借りているのですが、解体工事のため今日で閉鎖ということで、様子を見てきました。
子ども服がサイズごとに分類して並べてあります。
明日からは別の場所で、不特定多数への配布ではなく予約者への物資の受け渡しという形態で活動を継続するそうです。
今日は最終日ということで、いつも炊き出しなどをしている名物おじさん(お名前は知らないのですが)が、駐車場でかき氷を無償配布していました。
今日はさらに妻がパートで働いている保育園で知り合った、子育て世代のお母さんの支援に関わっている方から相談を受けました。
就学前の小さな子どものいるお母さんの「たまり場」的な集会所を探しているというのです。
つまり、子どもを安全な環境で遊ばせつつ、同世代のお母さん同士でコミュニケーションができる場所ということです。
そういうママ友の集合場所なら公園だろうと思うのですが、こちらで「公園」とは、都会の住宅地にあるような「遊具のある広場」ではなく、「整備してある山林」のような場所なのです。
それで当地では、そういう場として機能していたのがコミュニティセンター(コミセン)と呼ばれる地域の集会所だったのですが、水害でコミセン自体が被災したり、物資の物置に転用されたりして、ほとんどの地区で水害後はコミセンが閉館になっているそうです。
どうせ教会は平日は閉めていますし、教会が地域の人々のお役に立てるなら嬉しいことですので、その人を人吉教会にご案内し、集会室を見てもらいました。
するとすばらしい環境なので、是非使わせてほしいとのこと。
タダではかえって利用しづらいと思ったので、利用者は1日につき100円、入館料代わりに献金していただくことにしました。
教会の600坪の敷地の入口は細い坂道の一箇所だけしかなく、それ以外の境界は道路に面していなくて不便なのですが、「こんなに広くて、しかも車が来ない安全な原っぱは市内にも滅多にない。小さな子どもを遊ばせるのに最適」と、喜ばれました。
ただただ草刈りが大変な、無駄にだだっ広い教会の敷地が、初めて人のお役に立てて驚きです。
そのようなことで来週、お試しで子育て支援の集会所として使ってもらい、評判が良ければ軌道に乗せるつもりです。
自分たち夫婦にとって、確かに水害は直接被災しないまでも大変な経験ではありましたが、その代わり全くつき合いのなかった人々と繋がる機会がたくさん与えられたように感じています。
昨年、人吉への異動を言い渡された時は正直なところ、複雑な気持ちだったのですが、これは人事権者の思惑ではなく、神の計らいだったに違いないと、今は確信に近い思いでいます。