九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

教会の引越しと人間関係づくり

先週の金曜日、1月12日に教団から書状が届きました。
福岡の新教会「九州北ハリストス正教会」の開設準備と並行して、2月1日付での開所を教団に申請していましたが、それを承認する旨の内容です。

九州北ハリストス正教会開設の教団からの承認書

日本正教会傘下の各地の教会は、宗教法人格の有無を問わず、教団の承認なしに勝手に建物を建てたり、新教会組織を創設することはできません。

その意味で、これはオフィシャルに新教会の開設が認められたことになります。

教団から資金提供を受けて進めてきたプロジェクトである以上、教団が承認しないわけはありませんから、出来レースと言われればそれまでですが、やはり担当者として嬉しいというのが率直な気持ちです。

 

翌日の13日(土)は、かねてから予定していた福岡伝道所から新教会への什器備品の引越し作業です。

少しでも代金を安くするため、午後の遅めの時間帯で発注していました。

 

14時半に業者が到着。

福岡伝道所の前は道幅が狭くて車が乗り入れられないのですが、50mくらいの位置までトラックを付けてくれました。プロのドライバーとはいえ神業です。

細い道に乗り入れた引越しのトラック

荷物の量は少ないので、あっという間に搬出されました。

伝道所のプレハブ小屋は、今回の新教会開設と共にその役割を終えたわけですが、がらんとした室内を見渡すと、今日に至るまでの先人の苦労がしのばれます。

がらんとした伝道所の室内

トラックより先回りして新教会に行きましたが、数分後にはもうトラックが到着しました。旧伝道所からわずか2㎞しか離れていないので当然ですが。

新教会にトラックが到着

荷物のほぼ全ては、2階のチャペルに置くだけですので、搬入は搬出時よりも短時間で終わりました。

室内は旧伝道所よりも広いので、什器備品も余裕をもってレイアウトできます。

レイアウトを考えていると楽しくなってきます!

チャペルのレイアウトを考える

業者は作業を終えて16時半頃に帰って行きましたが、暗くなる前に済ませようと考えていたことがありました。

それは、新教会の近隣住民への挨拶回りです。

 

近所の方たちからすれば、ずっと売りに出ていた家にやっと買い手がついて、どんな人が買ったのか興味津々だったところ、教会の看板が出ていたわけです。

しかも「ハリストス正教会」という聞いたことがないような名前です!

最近はカルト宗教による社会問題が顕在化してきており、「聞いたことがない宗教団体」が隣に来るなんて嫌だ、と思う方がいても不思議ではないはずです。

また、実際に祈祷を始めれば、世間では休日である日曜日の朝に人が集まって、大声で歌を歌ったりするわけです。それを迷惑に思う人がいるかも知れません。

そのような地域の皆さんの不安を払拭し、良好なご近所づきあいをさせていただくためには、最初のこちらの姿勢が肝心です。

実際に新教会に住まいを移すのは何か月も先の話ですが、教会としての活動を始める以上、こういうことに無神経でいたら「あそこからは何の挨拶もない。やっぱり怪しい人たちでは」と言われかねません。

 

そこで妻があらかじめ買っておいた手土産を持って、夫婦で教会に隣接するお宅を訪ねて回りました。

「日曜日だけはどうしても難しいですが、町内会のお手伝いもできる限りさせていただきます」と言うことも忘れませんでした。宗教云々以前に、既存の住民が負担に思っているのは町内会や自治会の行事や当番だからです。

空き家が多くて、人が住んでいる家は6軒だけでしたが、まずはけじめをつけられて良かったです。

 

挨拶回りを終えて、最後にこの物件を買った時の不動産会社の営業担当者のO氏を訪ねました。O氏は購入代金を払って物件の引渡しを受けた後も、住宅のリフォームやメンテナンスについてアドバイスしてくれたり、工事業者に口をきいてくれたり、空き時間に掃除に来てくれたりと、給料の範囲外のサービスを親身にしてくれたのです。

会社に着いた時は17時半過ぎていましたが、まだ営業時間中で、しかも訪問営業には遅い時間帯だからか、O氏も他の社員も事務所にいました。

O氏に店頭に出て来てもらい、「今日、教会の引越しが済んだのでお知らせにきました。Oさんが良くしてくれたおかげで本当に素晴らしい物件を買うことができました。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と言って、「これを皆さんで召し上がってください」と菓子折りを渡しました。

私自身も前職で営業経験が長かったので分かりますが、契約後に客の側が会社に来て営業担当者を出せと言うのは苦情が大半で、わざわざお礼を言いに来るというのは滅多にないはずです。

アポなしのサプライズ訪問で、O氏は嬉しそうでしたが、他の社員たちが(たぶん上司も)見ている前でしたから、O氏の社内での株も上がるかもしれません。

一つの場所で長く教会をやっていくには、信徒や地域の人々だけでなく、関わりのある業者さんも大切にして、良いお付き合いをしなければと思っており、O氏も例外ではないので、これまた良いけじめをつけることができました。

 

翌日の日曜日は熊本巡回のため、不動産会社を出て熊本に移動。到着は19時半で、お腹がペコペコになっていましたが、ひと仕事やり遂げた満足感で一杯でした。