九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

ブラームスとチャイコフスキー 同じ誕生日の大作曲家

今日、5月7日は1833年ヨハネス・ブラームス1840年ピョートル・チャイコフスキーが生まれた日です。

二人はほぼ同年代ですが、亡くなったのもチャイコフスキー1893年11月、ブラームスが1897年4月と、3年半しか違いません。つまり活躍した時代が完全に重なっているわけです。

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ブラームス(1833-1897)

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チャイコフスキー(1840-1893)

ちなみに日本の有名人では、木戸孝允桂小五郎)がブラームスと、渋沢栄一チャイコフスキーと同い年です。つまり、わが国の幕末から明治中期くらいを生きた人々だといえます。

 

私は子どもの頃からクラシック音楽を聴くのが好きで今日に至っているのですが、ブラームスチャイコフスキーも大好きな作曲家です。その二人の誕生日が同じということで、5月7日になると二人の作品を聴きたくなります。

 

今日はたまたまYouTubeを検索していたら、「六重奏曲 Brahms vs Tshaikovsky」というタイトルで、二人の弦楽六重奏曲のヴァーチャルコンサートの動画がヒットしました。

ちなみに私自身は高校時代の部活で室内合奏団に入り、そのおかげでクラシック音楽のジャンルの中では室内楽が大好きです。


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上演されているチャイコフスキーの作品は「フィレンツェの思い出」作品70。彼の晩年の作品であり、最後の室内楽曲です。

ちなみに彼の最後の作品は、有名な交響曲第6番「悲愴」作品74。彼は悲愴を自ら指揮して初演した9日後に急死しましたが、年齢は53歳で、老人でも闘病中でもありませんでした。よって「フィレンツェの思い出」も時期的には晩年の作品とはいえ、力強くて緊張感のある音楽だと思います。ちょっと副題が曲想と合っていない気がしますが…

 

この作品と直接関係ありませんが、チャイコフスキーは当然ロシア正教会の信徒でしたから、正教会の宗教曲も書いています。「金口イオアンの聖体礼儀」作品41は、実際の聖体礼儀で歌うことを想定して書かれたものです。カトリックのミサ曲と異なり、正教会の祈祷の聖歌を「通作」するのは稀な取り組みです。ただ、この曲の音源のほとんどは「合唱曲」として録音されており、聖職者との声の掛け合いがありませんので、私には音取り練習音源のようで、何とも間が抜けて気に入らないのですが。


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さてブラームスの作品は弦楽六重奏曲第二番。彼が32歳の時の作品です。同時期にピアノ五重奏曲やホルン三重奏曲、チェロソナタ第一番など、室内楽曲を集中的に書いています。

 

また三年後の1868年には「ドイツ・レクイエム」を出しました。これは宗教曲というより、聖書のテキストにインスパイアされた世俗合唱曲(その意味ではヘンデルの「メサイア」も同じ)ですが、歌詞である聖句の選択といい、歌詞の意味と曲のマッチングといい、本当に素晴らしい作品です。

実際に歌ってみると、第一曲の「悲しむ者は幸いである、彼らは慰められる」(マタイ5:4)から始まって、終曲の「主のうちに死ぬ者は幸いである」(黙示14:13)に到達すると、「ああ、キリスト者の最終目標は、主と共に天にあることなんだ。だから信仰ある限り、死もまた悲しみではなく幸い(selig)なんだ」と再認識させられて目がウルウルしてきます。

下の動画はノルウェーソリスト合唱団による「ドイツ・レクイエム」の演奏。ソリスト合唱団なんて矛盾した名前ですが、声楽家による少数精鋭の合唱です。合唱の人数が少ないのに、ピアノ伴奏版でなくフルオケ伴奏で大丈夫かと思いましたが、実にクリアな合唱で本当に素晴らしい演奏です。


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いずれにせよ器楽曲であれ声楽曲であれ、心に染み入る作風の作曲家だと私は思います。

ちなみに彼の交響曲第一番の初演は1876年で43歳の時。彼は交響曲を書くからにはベートーヴェンのそれと比肩しうるものでなければならないと思っていて、完成まで21年かかったというのは有名な話ですが、結果として26歳の時に書いたピアノ協奏曲第一番(これは青春のモヤモヤ感を吐露したような熱い曲ですが)を除いて、大編成のオーケストラ曲は人生の後半でしか書いていません。

 

二人とも作品の数は決して多くありません。作品番号が付いている曲ではブラームスが122曲、チャイコフスキーは74曲しかありません。確かに二人は長生きとは到底言えませんが、もっと早死にだったモーツァルトも最後の作品「レクイエム」はKv626です。

その限られた数の二人の作品は、クラシック音楽を聴きだして半世紀になる私の心を今でもとらえています。