九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

ヘンデルの「メサイア」初演日

昨日、出張から戻って疲れたので、今日はずっと在宅で原稿書きに専念していました。

あちこちで花を見てきましたが、司祭館の庭のツツジも満開です。

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司祭館の庭のツツジ

さて本日、4月13日は1742年にヘンデル作曲のオラトリオ「メサイア」が初演された日です。

ある程度の規模の混声合唱団、とりわけミッション系の学校の合唱部だったらお馴染みの曲でしょう。全曲を知らなくても、第44曲の「ハレルヤ」は誰でも聞いたことがあるはずです。

私は学生時代の男声合唱と、教会の聖歌隊しか合唱経験がなかったので、50代になるまで「メサイア」を歌ったことがなかったのですが(正教会メサイアを歌うことはない)、数年前から趣味の合唱で歌う機会が何回もあり、今はもう暗譜しています。

 

作曲者のヘンデルは20代の頃からオペラ作曲家として成功し、名声を博していた人物ですが、中年期にスランプに陥りました。仕事のマンネリ化ということでしょう。

そこへ聖書の聖句をそのまま歌詞にしたオラトリオの依頼を受け、彼は「新しいジャンルへの挑戦」によって復活したのです。

全53曲、演奏時間2時間半の大作を24日で書き上げたのですから、よほどやる気が満ち溢れたのでしょう。

 

私が「メサイア」に一番注目するのは、聖書の言葉に基づく歌を教会ではなくコンサートホール、つまり世俗の娯楽会場で演奏するために書いたということです。

ヘンデルが生きた18世紀イギリスは、世界的な大国の道を歩む中で社会の世俗化が進んでいましたが、「娯楽として聖句を歌うなんてけしからん」という批判はかなりあったようです。しかし、彼はそれを恐れずに、この「新しいジャンル」に勝負を賭けたのです。

音楽としてももちろん良い曲なのですが、そういう既成の価値観を覆そうというヘンデルの「挑戦意欲」が伝わってくるような気がして、私は「メサイア」が大好きです。

 

添付したのは、デンマークのモーゲン・ダール室内合唱団の演奏。

十数人の少数精鋭で歌っています。私は大合唱よりも、こういう緻密な合唱が好きなので愛聴しています。

 


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今はコロナ禍で、メサイアに限らず他の曲でも合唱をする機会がなくなってしまいましたが、いつかまた演奏したいと思っています。