九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

熊本地震から5年~「何よりもまず神の国と神の義を求めなさい」(マタイ6:33)

今日で2016年4月14日に発生した第一回熊本地震から5年となりました。(二回目の地震は16日)

人吉市では午前10時から犠牲者への黙祷を市民に呼びかけるサイレンが鳴らされたので、それに合わせてリティヤ(永眠者への短い祈り)を献じました。

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熊本地震の犠牲者へのリティヤ


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2万人近い方たちが亡くなった東日本大震災と比べて、内陸部で発生した熊本地震では津波などが発生しなかったため、死者は273人でした。しかし、亡くなった方々にそれぞれの人生があったことは、東日本大震災の犠牲者の皆さんと何ら変わらないのであり、東日本より亡くなった人が少ないからといって小さな災害であったとは到底言えません。

むしろ、震度7地震が二回続けて発生したのはわが国の観測史上初めてであり、18万人もの人々が避難生活者となり、産業や公共施設も大きな被害を受けました。熊本のシンボルともいうべき熊本城が崩壊したのは広く知られていますが、人吉を含む5市町の本庁舎も被災して取り壊され、人吉市では未だに再建できていません。また交通インフラのうち、南阿蘇鉄道はまだ全線復旧していません。

人口170万人の熊本県が、5年を経ても復興途上に置かれているという意味で、とてつもない大災害だったと言えましょう。

私自身は熊本出身ではありませんし、地震発生時は横浜市民で、熊本には誰も知人がいませんでしたから、申し訳ないですが当時の意識として他人事であったのは事実です。

しかし、全く予期せぬことに自分自身が熊本県に遣わされ、さらに自分の住む町が激甚災害に見舞われたことで、被災した人々の心情を知り、また自分自身も被災地で生きる自覚が培われました。これは神の計らいに違いないと思っています。

 

祈祷後は山江村の丸岡公園に行ってきました。ここは昔、山城があった跡で、今はツツジの名所になっています。

出張続きで地元の花を愛でる時間が少なかったのですが、ようやく見事な花を見ることができて良かったです。

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丸岡公園のツツジ

神が造ったこの大自然は、災害によって人間が作った文明を破壊し、人々を苦しめましたが、同時に毎年変わらずに花をつけて美しく装ってもいます。

エスは「栄華を極めたソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。今日は生えていて、明日は炉に投げ込まれる野の草でさえ、神はこのように装ってくださる。まして、あなた方にはなおさらのことではないか」(マタイ6:29-30)と言いました。そして、この世の目先のことに振り回されるより「何よりもまず、神の国と神の義とを求めなさい」(マタイ6:33)と説いています。

熊本地震も人吉の豪雨災害も、自然がもたらした大きな災いであったことは事実ですが、自分も目先の苦労を嘆くより、神への信頼のもとに将来への希望を持ち続けたいものだと、この花々を見て改めて思いました。