九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

セルビア正教会の新総主教が着座~これからの教会リーダーの資質

昨日、セルビア正教会の主教会議で新総主教にクロアチアの首都ザグレブポルフィリエ府主教が選出。今日、総主教座のベオグラード聖ミハイロ(ミカエル)大聖堂で着座式が行われました。

昨年11月、当時のイリネイ総主教がコロナで永眠したモンテネグロ府主教の葬儀を司祷した際、自身も感染して永眠しました。セルビア正教会はたった1か月でトップとナンバー2を失うという悲劇に見舞われたわけです。

今回の主教会議は、故イリネイ総主教の後任選挙として行われたものです。

 

ポルフィリエ新総主教は1961年生まれで今年60歳。

アテネ大学に留学して神学博士号を取得し、38歳で主教叙聖されていますから、出世コースに乗っていた方かも知れません。

しかし経歴を見ますと、ノヴィサドの副主教時代の2005年から薬物依存者の社会復帰の仕事に携わって来られたとあります。

また、コソヴォからノヴィサド修道院に異動した時は、多くの修道士たちが彼を慕ってついてきた。社会の若者たちにも絶大な人気があったともありました。

 

セルビアは国民の8割以上が正教徒の国。そのような、いわゆる「正教国」の教会のトップ選びは名門修道院の院長をしているキャリア官僚みたいな人物か、さもなくば高名な神学者がなるもの、つまり社会の人々とかけ離れた出来レースの世界だと思っていました。しかし、セルビア正教会は年功序列的な人材よりも、若者を含む一般社会への宣教牧会に励み、かつ社会の底辺層(薬物依存者には失礼ながら)の救済に関わってきた人をリーダーに選んだのです。

私自身はポルフィリエ聖下を直接知りませんが、教会は無機質な白亜の巨塔ではなく、本来社会に生きる人々のために存在するのですから、古代中世の教会が想定していなかった多様な価値観の存在する現代社会では、実にふさわしい資質を備えた方だと思います。

 

私はセルビアが大好きで、2015年から17年まで三年連続でセルビアに行き、現地の教会で聖体礼儀にも陪祷させていただきました。

17年は上記の聖ミハイロ大聖堂で陪祷しましたが、故イリネイ総主教は地方巡回で不在だったため、お会いできませんでした。

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2017年8月、セルビア総主教庁前にて(右後ろが聖ミハイロ大聖堂)

いつか機会が巡ってきたら、またベオグラードに行き、ポルフィリエ聖下とお祈りを共にできたらと思っています。