全国的な寒波の襲来で、九州も雪になりました。
福岡県など九州北部が特にひどく、そのため週末の福岡巡回も高速道路が通れなくなったため、取り止めました。
さて、木曜日の夜にあわただしく鹿児島に行きましたが、それは金曜日に鹿児島で行われた霧島国際音楽祭の演奏会を聴くためです。
日帰りで行くつもりが、雪の襲来で高速道路が通れなくなる心配があり、二泊三日の行程になりました。
霧島国際音楽祭は、霧島市のみやまコンセールをメイン会場にして毎年夏に開催されるクラシックの音楽祭で、今回でなんと41回目です。今回も本来は昨年夏に開催されるところ、コロナのため1月に延期となりました。皮肉なことにコロナの感染拡大は、昨夏より今の方がひどいのですが…
当音楽祭の名前は以前から知っていましたが、遠い鹿児島県でのイベントだからと気に留めたことはありませんでした。しかし、九州に転勤になったことで、行ってみようと思い立ちました。
昼の部が藤田真央さんのピアノリサイタル。夜の部が鈴木雅明先生指揮、バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)演奏で、管弦楽のオール・バッハ・プログラムです。
藤田真央さんは2019年のチャイコフスキー国際コンクールの準グランプリ。当該コンクールのピアノ部門での日本人入賞は、2002年にグランプリを受賞した上原彩子さん以来です。
また、BCJはわが国における古楽演奏の第一人者集団で、存じ上げている先生がた(ただし皆さん声楽)もたくさん所属しているのですが、東京では演奏を聴きに行く機会がありませんでした。
そのようなわけで、いやがおうにも期待が高まりました。
会場の宝山ホールは1500席ほどのキャパシティですが、コロナ対策の入場制限として、500席ほどしかチケットを発売しなかったようです。私もチケットをネットで購入しましたが完売寸前。藤田さんのリサイタルは最後の二枚でした。しかし、ソーシャルディスタンス確保のため、席の前後左右を空席にする措置が取られたので、ゆったりと聴くことができました。
藤田真央さんの演奏は、前半がモーツァルトのピアノソナタの6番と9番。後半はブラームスの二つのラプソディ・作品79とリヒャルト・シュトラウスのピアノソナタ。R. シュトラウスが当時16歳とはいえ、ピアノ曲を書いていたとは知りませんでした…
演奏は、曲の色彩感の変化や歌うような表現にメリハリがあって素晴らしかったです。演奏の技術力があるピアニストは世界中にたくさんいると思いますが、表現力がとにかく秀逸です。特に後半の後期ロマン派の二曲は、半端ない緊迫感で引き込まれました。
彼は98年生まれの22歳(なんと私の末っ子と同い年)という若さですが、既に大物感があります。最後の二枚のチケットをゲットできたことは本当に幸運に思いました。
夜の部のBCJのオールバッハの演奏は、前半が管弦楽組曲4番とブランデンブルク協奏曲5番、後半がオーボエとヴァイオリンのための協奏曲BWV1060Rと管弦楽組曲3番。
最初と最後を管弦楽で華やかに演奏し、中間を少人数で協奏曲を演奏し、ソリストの名人芸を堪能するという趣向です。
アンサンブルの統一感と速度の緩急のメリハリが実に素晴らしかったです。特にブランデンブルク協奏曲は各パート1名の七重奏で演奏。第一楽章のチェンバロのカデンツァも素晴らしいですが、アンサンブルも素晴らしい。私も高校時代に演奏した曲で(BCJと比べるのはおこがましいにも程がありますが)、昔を思い出して胸が熱くなりました。
管弦楽組曲3番のアリアは通称「G線上のアリア」として有名ですが、アンコールでも演奏。これも高校時代に演奏した曲ですが、コロナ禍で天下のBCJでも演奏活動にいろいろ困難があるだろうに、よくぞ九州まで来て、こんなに質の高い演奏をしてくださったと思うと、涙が出そうになりました。
雪のためにホテルで二泊したことで、費用的には高くつきました。東京にいたら、演奏会くらいで泊りがけなんてあり得ません。しかし、東京から遠く離れた鹿児島で、さらにコロナ禍の厳しい状況下で、まる半日これだけ上質な演奏を聴くことができて本当に良かったと思いました。次回は今年の夏でしょうが(コロナが心配ですが)、今から楽しみにしているところです。