私も妻も飲むのが大好きです。
食事に合わせて飲む主義なので、日本酒、ワイン、焼酎をその日の夕食に合わせてセレクトし、夫婦で晩酌をたしなみます。
とりわけ人吉は車でないと出かけられないため、外食しても飲めないので、こちらに来てからはよほどのことがない限り、夕食は自宅で食べています。
そのようなわけで、外出した時に瀬戸物屋や骨董屋を見かけると、猪口をペアで買うようになりました。ずいぶん貯まってきましたが、いろいろなサイズがあるので、酒の種類によって使い分けています。(ワインの時は合わないので、ワイングラスを使います)
熊本の郷土料理として「からし蓮根」はよく知られています。
先週末の熊本出張で、新町を歩いていたら「からし蓮根」を最初に作った店「森からし蓮根」の本店がありました。
からし蓮根は江戸時代初め、病弱だった熊本藩主・細川忠利の強壮のために創作された食べ物。蓮根の断面が細川家の家紋(写真ののれん参照)に似ていることから、細川家の門外不出の料理とされ、一般人が食べられるようになったのは明治になってからです。その細川家の料理人がこの店の創業者です。歴史がありますね。
その伝統のからし蓮根を味わおうと購入。
帰宅してから晩酌のつまみにしましたが、スーパーで普通に売られているものと、あまり味は変わらない印象でした…
かつては細川家の秘伝の食べ物でも、今は庶民的になってしまったということでしょう。
球磨焼酎は「スコッチウィスキー」や「ボルドーワイン」と同じく、地名をブランドにした酒として国際的に認知されています。
球磨焼酎の定義は「原料は米のみ」「球磨地方の地下水を使用」「球磨地方で製造」など、いくつか条件があります。
認証された醸造元は27しかなく、さらにそのうちの数社が7月の水害で被災し、休業してしまったので、今は製造している蔵元がさらに減っています。大手の数社を除いて、家族を中心に10人以下の社員で造っているところがほぼ大部分のため、製品は基本的に県内で消費され、本州ではあまり広く出回っていません。
私たち夫婦は人吉に越して来た時、球磨焼酎の全蔵元の飲み比べをしようと決め、この1年間で飲んだ(つまり空けた)銘柄をリストアップしています。焼酎以外の酒も飲んでいるので、球磨焼酎自体はまだ20銘柄足らずですが、蒸留方法や熟成方法の違いでそれぞれ特徴があり、飲み比べは実に楽しいものです。
一般に出回っていない銘柄を手に入れようと、蔵元を直接訪ねたりもしています。
今は、あさぎり町・松の泉酒造の「松の泉 平成十六年」を飲んでいます。この蔵元は、人吉出身のタレント・内村光良のお母さんの実家で、今は内村の従兄弟が社長です。
これはいわゆるビンテージもので、蔵元に直接行かなければ手に入りません。ビンテージと言っても、どこの蔵元でも4合でせいぜい2500円から3000円程度ですが、それでも濃厚で甘みのある米焼酎の味を楽しむことができるので、球磨焼酎の飲み比べはコストパフォーマンスの良い、人吉ならではの趣味かも知れません。
球磨地方には焼酎用の「ガラ」と呼ばれる独特な徳利があります。
せっかく球磨焼酎を飲み比べるのだから、ガラを手に入れようと思っていたところ、妻と蔵元めぐりをしていた時に湯前町の酒屋で偶然このガラを発見。妻が一目ぼれして購入しました。胴に描かれているのは、球磨地方の郷土玩具「きじ馬」です。
昔は焼酎を生のままガラに入れ、直火で熱して飲んでいたそうですが、こんなきれいな酒器でそういうワイルドなやり方は性に合わないので、私は計量カップで湯と焼酎を量ってガラに入れ、お湯割りにして飲んでいます。
ちなみに鹿児島には、薩摩焼酎用の酒器として「黒じょか」という土瓶のようなものがあります。
もちろん、私も薩摩焼酎を飲む時はガラではなく、黒じょかを使っています。
お湯割りなら湯、水割りなら水と焼酎をコップに直接入れて混ぜても成分は変わりませんが、私は酒を飲むのはただ酔うためではなく、雰囲気も併せて楽しむことが大事だと思っていますので、ガラや黒じょかは必須アイテムです。
焼酎だけでなく、日本酒も九州の地酒をいろいろ楽しんでいます。首都圏では東北や新潟の美味しいお酒が豊富に出回っているので、九州の日本酒はあまり馴染みがなかったのですが、こちらに来て飲むようになりました。九州の中でも特に熊本県は水質がよく、米もたくさん採れるので日本酒も良質なことが良く分かりました。
もうきりが無くなるので、日本酒の話は別の機会にしますが、食べ物も酒も美味しいものに満ち溢れた熊本県での生活で、心まで豊かになったような気持ちでいます。