「朋あり遠方より来る また楽しからずや」という有名な言葉は、『論語』の『学而』に原典があります。
「同じ学問を志す者は、どんな遠くからでも集まって来て一緒に学ぶ。何と楽しいことだろう」という意味です。
しかし、太宰治はこの言葉を引用し、独自の解釈をしています。
「ちょうどお酒があるとき、ふらと、親しい人が訪ねてきてくれたら、実に、うれしい。友あり、遠方より来る、というあの句が、おのずから胸中に湧き上がる」(太宰治『酒ぎらい』)
つまり、普段会っていなかった友人が訪ねてきて、一杯やりながら旧交を温めるのは楽しいという解釈です。「ともに勉強する」という原義が「ともに飲む・遊ぶ」という逆の意味になっています。
しかし私も含めて、現代ではほとんどの人が「朋あり遠方より来る」の意味を「太宰的に」理解していると思います。
今日はシルバーウィークを活用して、東京の友人二人が人吉まで訪ねてきてくれました。
人吉ハリストス正教会で待ち合わせ、私の車で市内の青井阿蘇神社や人吉城などの観光スポットを回りました。
人吉の温泉に入ってみたいとのことで、一番歴史のある共同浴場の「元湯」に案内しました。
彼らが泊まった旅館は有名なところですが、営業再開はしてもまだ再建途上で食事が出ないため、夕食は保育園での仕事が終わった妻も連れて、四人で人吉名物のうなぎを食べに行きました。
熊本県内は今月末までまん延防止期間中で、飲食店も午後8時閉店ですが、お酒は「解禁」となったので、彼らに球磨焼酎を味わってもらいました。
人吉の中心地を見て回るということは、昨年の水害の被災跡を見て回ることとイコールです。私はネット上であの未曽有の水害について書いてきましたが、それが誇張でも何でもなく、現実のことだと分かってもらえたと思います。
今日は「太宰的に」遠来の友人と旧交を温めることができた一日でした。コロナは悩ましい問題ではありますが、多くの皆さんに人吉へ来てもらいたいと願っています。