九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

二日連続で熊本へ~ご葬儀への考えについて

一昨日永眠された信徒の通夜と埋葬式(一般でいう告別式に相当)の司祷で、昨日と今日の二日連続で熊本の斎場に出張しました。

ご永眠者は98歳で、配偶者や子どもはいなくて施設に入所していました。そのため、参列者は義理の姉妹二人(それぞれ90代)と、その方たちの子どもと配偶者、つまり故人の義理の甥姪で計7人だけでした。コロナ禍のため、ご遺族の意向で他の信徒にはお知らせするのを控えました。いわゆる家族葬というスタイルです。

 

家族葬のような規模でも、葬儀を行えるだけのキャパシティがある聖堂は、九州では人吉と鹿児島しかないので、それ以外の場所に住んでいる方のご葬儀は一般の葬儀場を使うことになります。

私が九州に転勤して執り行ったご葬儀は三例目で、すべて熊本県内でしたが、どうやら熊本県では圧倒的に仏式の葬儀が多く、キリスト教式の葬儀の経験を持つ葬儀社は少ないようです。それに加えて正教会キリスト教各派の中でさらに少ないですから、会場の設営スタイルや式次第など、ほとんど全てを私が葬儀業者に説明して取り計らうことになります。

もう半分、自分が葬儀業者になったようなものなのですが、キリスト教の教義の根本が「死者の復活と永遠の生命」にある以上、永眠者へのお祈り(正教会用語では永眠者奉事)をきちんと執り行うことは当然ですので、絶対に手抜きはしません。故人の生前の地位や献金の多寡は全く関係ありません。

 

さらに儀式だけでなくご遺族、特に故人の子ども世代(だいたい私と同世代が多い)の方たちとは葬儀の時に初対面というケースが多いので、私の場合は会食などの場でしっかりコミュニケーションを取るように心がけています。その遺族の信仰が熱心であるとかないとかいう以前に、ご永眠者様がきっかけとなって結び付けてくれた人間関係をしっかり保っていくことが大事だと考えるからです。

私はこれまで首都圏と静岡県でしか牧会の経験がありませんが、熊本県はそういう地域と違って、お通夜の後や告別式の前などに故人の棺を式場から座敷に運び、そこで遺族だけが集まって会食することが習わしであり、それが結構重要な位置づけになっています。お坊さんは同席しないことが多いそうですが、こちらが仏教に合わせる理由はないので、私たち夫婦はある意味図々しく、ご相伴に与るようにしています。

 

そのようなわけで、今回もこの二日間、熊本を往復して葬儀を司祷しつつ、ご遺族とすっかり顔なじみになりました。

 

夕刻、人吉の聖堂に到着して、葬儀関係のグッズ(?)を至聖所の元の場所に戻しました。

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人吉ハリストス正教会の至聖所(聖堂内陣)

土曜日の17時からは人吉教会で晩課(Vesper 夕方の祈り)を行っているのですが、今日は葬儀と重なったので中止する旨、昨日聖堂の扉に貼り紙をしました。知らずに教会に来られた人への配慮としてそうしたのですが、実際に来た人は誰もいませんでした(笑)。

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教会の境内に咲いたゼフィランサスの花

教会の敷地内にはいつの間にか、秋の花のゼフィランサスがたくさん咲いていました。

暑くて気づきませんでしたが、季節は確実に秋に向かっています。