誰もがご存じのとおり本日、8月6日は広島に世界で最初の原子爆弾が投下された日です。
今日、広島で行われた平和記念式典にジョージアのティムラズ・レジャバ駐日臨時代理大使が出席しました。
それにあたって朝日新聞社がレジャバ大使にインタビューしていますのでご紹介します。
「広島は第二のふるさと」ジョージア大使、平和記念式典出席へ 母国の戦争は「震撼」 https://t.co/7NtvLA3ZH5
— 九州の正教会 日本ハリストス正教会九州管区 (@ocjkyushu) 2021年8月6日
レジャバ大使は研究者の父上が広島大学に留学していた関係で、幼少時代を広島で過ごしています。早稲田大学を卒業後、キッコーマンに勤務。つまり日本の大学を出て(しかも私の後輩)、日本でサラリーマンをしていた経歴の方です。
「広島は第二のふるさと」というレジャバ大使は、原爆を経験した広島の医師から話を聞き、核兵器の残酷さを知ったとのこと。
また、ご本人もジョージアで南オセチア紛争を経験し、祖国が他国の軍隊に蹂躙される悲哀を知っています。
そのような経緯があって、大使として日本に赴任して最初の原爆記念日に、「第二のふるさと」広島での平和記念式典出席を決意されたそうです。
さて、レジャバ大使は日本着任以来、ツイッターでこまめに情報発信されています。もちろん日本語です。
最近は、いわば公式ジョージアファンクラブとして「みんなのタマダ」というグループを立ち上げて、ツィッターでメンバーを募集。私も申し込んだら、早速大使名の挨拶状とお土産が届きました。
ちなみに「タマダ」とはジョージア語で「宴会の幹事・仕切り役」を指す単語です。ジョージア社会はわが国の農村のように、地域や親族の人間関係が大変重んじられ、宴会でのコミュニケーションが欠かせない文化なのです(もちろん飲み物はワインです)。
つまり、最近のわが国では敬遠されつつある「飲み二ケーション」で意見を交わし、親交を深めるのが当たり前の社会といえます。
レジャバ大使としては、「みんなのタマダ」会員がさらにSNSなどでジョージアについての情報を発信したり互いに交流したりすることで、つまり宴会に代えてネット上のコミュニケーションを通して、さらに新たな「ジョージアファン」を拡大したいと考えておられるのでしょう。
ジョージアは320年代、隣国アルメニアに次いで世界で2番目にキリスト教(もちろん正教会)を国教に採用した国です。
そういう関りがあって、私は2016年と2018年の二回、ジョージアの教会や修道院を巡礼し、益々ジョージアが好きになって今に至っています。
さて、レジャバ大使はインタビューの中でこう述べています。
「民族や文化など、今に伝わる伝統というものが、平和の解決に対する鍵にもなれる」
これはとても重要な示唆を含んでいます。
というのは、「民族紛争」「宗教戦争」という言葉があるように、民族や文化の違いは戦争の要因になると思いがちですが、それは「何かの利害のために戦争をしたい者」が開戦の理由として利用しているに過ぎないからです。
つまり民族や伝統文化の違い、さらには「多様な価値観」の存在は、それを相互に理解し、リスペクトし合うならば、対立ではなく平和共存の糸口になると大使は言いたいのです。
ジョージアは4世紀にキリスト教信仰を受け入れて以来、コーカサスの外への侵略戦争をしませんでした。また歴史上、帝政ロシア=ソ連領時代の200年間を除いて、ペルシャ、モンゴル、オスマントルコなどの侵略からの独立と独自文化と正教信仰を保った国です。大使の言葉にはそのジョージア人としての矜持を感じました。
異なる伝統を守ることは対立ではなく平和に繋がる…正教会もキリスト教社会においてそういうポジションのように思いますが、しっかり心得ていきたいと思います。