1月27日(ユリウス暦の1月14日)は、コーカサスの国・ジョージアに初めてキリスト教を伝えた聖ニノの記念日です。ちなみに日本正教会はロシア語読みに従って名を「ニーナ」と表記しますが、彼女の母語のギリシャ語でもジョージア語でも読みは「ニノ」です。
彼女はカッパドキア(現トルコ領)出身のギリシャ人女性で、4世紀初めにジョージアで宣教活動を行いました。
彼女は失明した国王ミリアン三世の目を再び見えるようにする奇蹟を行い、それがきっかけとなってジョージア(当時はイベリア王国)は337年にキリスト教を国教に定めました。キリスト教を正式な国教にしたのは隣国のアルメニアに次いで史上二か国目です。
ローマ帝国ではコンスタンチヌス帝によって、313年にキリスト教を容認するミラノ勅令、325年にキリスト教の正統な教義(正教)を定義するニケヤ第一全地公会、330年にローマからコンスタンチノープルへの遷都と、キリスト教化政策が進められていた時代でしたが、キリスト教を国教に定めたのはもっと後になります。
今から1700年も前、一人の女性がコーカサスの山奥に分け入ってキリスト教の宣教を行った、そしてそれが国家をも動かし、世界史に残る結果を出したということは驚異的です。
そしてジョージア正教会もまた、ニノ以来1700年にわたって存続し続けています。ちなみに正教会で一番大きい組織はロシア正教会ですが、ロシアがキリスト教を受け入れたのは988年であり、ジョージアより格段に新しい歴史しかありません。
そのようなわけで、ジョージア人のアイデンティティとして「正教徒」であるということがまず第一であり、そのキリスト教を伝えたニノはジョージアで最も敬愛されている人物なのです。
ガイドさんに尋ねたら、ジョージア人の女性で一番多い名前は「ニノ」とのことでした。
私自身はジョージアを2016年8月と2018年10月の二回、訪れています。歴史のある教会が至るところにあり、訪ねて回ったのは良い思い出です。
もちろん教会だけではなく、ジョージアは8千年前からワインが造られてきた「ワイン発祥の地」なので、現地の蔵元をめぐって甕造り(クヴェヴリ)のワインを飲み比べました。その紹介もすると書ききれなくなるので。またの機会に。
ニノはジョージア東部のボドゥベに眠っています。彼女の墓のある場所は女子修道院になっており、帝政ロシア領時代は皇帝も訪れるような巡礼地でした。
ここの修道女たちはイコンを手描きし、それを一枚数百円ほどの破格の値段で売っています。ジョージアのイコンは一般にイメージされるビザンチンのイコンより、格段に素朴で独特の画風です。
私も気に入って、修道女たちの描いたイコンをたくさん買って帰り、今も大切にしています。
人吉に来て、海外旅行が縁遠くなってしまいましたが、ジョージアは教会も風景もワインも料理も、何もかも素晴らしいところですので、いつかまた再訪したいと願っています。
もちろん皆さまにもジョージアの旅をお勧めします。