九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

鹿児島で復活祭 九州ですべての国の信徒に開かれた教会を

ハリストス復活。

今年の復活大祭西方教会と同じ4月20日でしたが、私は毎年のことながら九州各地を巡回して毎週復活祭の祈祷を執り行っています。

 

先週末の4月27日(日)は鹿児島ハリストス正教会復活大祭の聖体礼儀を執り行いました。

 

前日の夕刻に鹿児島に着いて、聖堂内を設営。

大斎カラーの黒色の布類を全て取り除いて、白い布に取り換えました。

土曜日の夕方に聖堂内の設営

日曜日は午前10時から聖堂の周囲の十字行で祈祷をスタート。

開式の十字行


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聖体礼儀の福音書朗読(ヨハネ1:1-17)は私が日本語、米国出身のアーロン兄が英語、ルーマニア出身のエレナ姉がルーマニア語で朗読しました。

福音書の朗読

祈祷の最後に信徒の皆さんが持参したイースターエッグなどを成聖しました。

イースターエッグなどの成聖

復活大祭の聖体礼儀では、普段は祈祷中に開けたり閉めたりするイコノスタシスの扉(正面を王門、向かって左を北門、右を南門という)を最初から最後まで開けっ放しにします。

さらに祈祷が終わった後も、光明週間(復活祭後の1週間)の間は扉を閉じません。

これはキリストが復活して、もはや墓にいないことを視覚的に象るものです。

もっとも次の鹿児島での祈祷は1か月後なので、私が帰る時に聖堂の戸締りに合わせてイコノスタシスの扉も閉じてしまいましたが…

復活祭の祈祷後の聖堂

鹿児島教会のイコン「主の復活」(19世紀のロシアで印刷されたもの)

祈祷後は信徒会館で祝賀会を開きました。

料理自慢のエレナ姉(惣菜店を営んでいるので料理は素人でなくプロですが)が焼いて持参した、ルーマニアの復活祭のパンもいただきました。

イタリア料理のパネトーネに似た食感で「パスカ」と呼ばれています。

ルーマニアの復活祭のパン「パスカ」

正教会では、ギリシャ語で「過越祭」を意味する「パスハ」(またはパスカ)は「復活祭」のことを指します。

それに伴って、その社会の復活祭のお祝いで欠かせない代表的な料理もパスハやパスカと呼ばれています。

面白いのは、ロシアで復活祭の時に食べる「パスハ」はレアチーズケーキを指し、パネトーネ状のパンは「クリーチ」と呼ぶのですが、ルーマニアではロシアのクリーチにあたるものを「パスカ」と呼んでいます。

同じ正教会社会でも地域や食文化の違いで、同じ名前の食べ物でも別のものを指すのが面白いところです。

 

さて、鹿児島教会の普段の参祷者は数人ですが、この復活大祭ではエレナ姉をはじめ、ルーマニアにルーツを持つ信徒が何人も来たので、久々に二桁の参祷者で盛大に聖体礼儀を行うことができました。

ちなみに、いま福岡に参祷する外国出身信徒は英語圏諸国から来ている人が多く、ルーマニア人は皆無なので対照的です。

 

ルーマニア大使館が公開しているデータを見ると、昨年時点の日本在住のルーマニア人は約2300人とのこと。

10年前は2800人いて、その頃から比べると減ったとはいえ、ルーマニア本国の人口が約2000万人であることを考えると、日本は欧米地域でないにも関わらず、かなり多くのルーマニア出身者が住んでいるように思います。

さらに日本で生まれた彼らの子どもたちも含めれば、さらに多くの人がいるでしょう。

 

民族としてのルーマニア人はギリシャ人やセルビア人と同様、正教会信仰が民族的アイデンティティーと一体化しています。これはムスリムオスマン帝国の数百年間に及ぶ支配下で歴史的に醸成されたものでしょう。

つまり、ルーマニア人はほぼ例外なく正教徒です。

 

日本正教会は、本州の大都市部ではルーマニア出身者が多く参祷していますが、私が着任する以前の九州では教会の認知度が今ひとつだったようで、ルーマニア人はあまり参祷していません。現に上述のエレナ姉も私のSNSで教会の存在を知って通うようになりましたが、彼女は私が着任するまで鹿児島で20年以上も暮らしていたにも関わらず、「鹿児島に昔から正教会があるなんて知らなかった」と言っていました。

鹿児島に限らず九州在住の彼らが、もっと教会に来てくれたらなあ、そのためにはもっと「九州の正教会」の認知度を上げなくてはなあ、と思うばかりです。

もちろんこれはルーマニア人を特別扱いするという意味ではなく、ロシアだろうとウクライナだろうと、他のどの国の出身者だろうと、同じ信仰を共有しているならば、戦争も民族紛争もないこの日本社会の正教会で交流してほしい。それこそが教会というものの文字通り使命(ミッション)だろうと考えます。

 

この九州ですべての国の信徒に開かれた教会づくりのために、これからも努めていきます。