以前も投稿しましたが、日本正教会は教団も各教区も、多くの個別の教会も5月末決算のため、今は多忙な時期です。
私の場合は会計業務を税理士か誰かにアウトソーシングできるほどの大教会ではないため、祈祷だけでなく、事務仕事も自分がやらなければならなくて、ブログを書いている暇がなくなってしまいました。言い訳ですが。
さて、先週の土曜日、かねてから予定していた熊本市での講演を行いました。これはウクライナから九州への避難者の支援を行っている㈱宙の駅の本田さんの主催によるもので、5月5日に鹿児島市で行ったものの第二弾となります。
会場のびぷれすイノベーションスタジオは、熊本日日新聞社(熊本県内でシェアNo.1の地方紙)が経営する貸しオフィス兼イベントホールです。
熊本県立大学と熊本日日新聞社のお力で、素晴らしいイベントになりました。今回、私はあくまでもゲストスピーカーなのですが、教会の独力ではこういうスペースと機材を整えることは困難です。
私は「ロシアのウクライナ侵攻は正しい」という考えはもちろん、「ウクライナにも非があるから戦争は仕方がない」という考えにも反対です。私はキリスト者ですから、いかなる理由があっても戦争を正当化することはできません。
だからといって「全てはロシアが悪い。だからロシア人は出ていけ。ロシア音楽もロシア料理も禁止」という、感情的で短絡的な考えにも反対します。行いと人間は別物だからです。
もちろん、ウクライナの紹介というテーマに関して、「ボルシチはウクライナ料理」「ウクライナは刺繍が名産」など、観光ガイドみたいな話ばかりするのはウクライナ支援の目的に合いません。もっとも固い話ばかりだと退屈なので、結局話題に入れましたが。
そのようなわけで、歴史上の出来事や統計上のデータなど、裏付けのあることに基づいて、「ウクライナの人々の多様なアイデンティティの存在」を中心になるべく客観的な話をするようにしました。
講演は事務局の方で録画し、YouTubeに上げてくださいました。
今回、私も初めて知ったのですが、BIGO LIVE という配信アプリがあり、そちらでプロフェッショナルに情報発信しているライバーと呼ばれる方たちがいます。そのライバーの方が3人来て、講演をライブ配信してくださいました。
後で聞いたら、講演会場への来場者は20名ほどだったのに、オンラインでの視聴者は1600人以上もいたのです。本当に驚きました。
質疑応答でもネットからの質問者が何人もいらっしゃって、皆さん熱心に聞いてくださっているなあと感心しました。
わが西日本教区だけでなく、どこの教区も講師を招いて講演会をやっているのですが、有名な先生を呼んでも100人集まるか集まらないか。まして神父の講話となったら、よほど話がつまらないと思われているのか、信者でさえなかなか集まりません。
私自身は教会行事でも教会外でも、講演を何回もやってきましたが、自分としては事前に時間をかけて準備し、それなりに有益な話をしているつもりなのに、人が集まらないために言いたいことが伝わらなくて、内心忸怩たる思いばかりしてきました。
それが、いわゆるインフルエンサーが協力してくれると全く様変わりなのです。改めてネットの拡散力に驚くとともに、その拡散の「やり方」についても考えさせられました。
私は前任地時代から、自分の教会での活動について、SNSでのこまめな発信を当然のこととして心掛けてきましたが、日本正教会の中ではそういう考えは少数派のようです。教会単位では、SNSどころかホームページすら開設していない教会、開設してもめったに更新していない教会が少なくありません。
どうも古い考えの人たちは「神父のくせにパソコンばかり眺めていて仕事をサボっている」と思っている節があるようなのですが、じゃあ神父の仕事とは何なのか。教会に来る信者を相手に祈祷することだけが仕事なのか。キリスト教がメジャーでない社会で、広くたくさんの人々に言葉を伝えることは仕事じゃないのか。本当に問い返したいです。
何だかとげとげしい話になってしまいましたが、言いたいことはネットの是非や、相手が信者か信者でないかを論じる以前に、今の社会にフィットした形で、たくさんの人々に情報をお伝えしたい。それこそが「宣教」だと思っているということです。
その意味で、ネットでの発信を今後も怠りなく続けていきます。まあ、そのためには忙しさにかまけて、こんなにブログの更新を、それこそサボっているようでは駄目なのですが…