九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

今年もあと一日 復興への希望に向けて

今年もあと一日。

今週は妻と新年を迎える準備に専念していました。

一昨日は妻が花を買ってきて司祭館の玄関を飾り付けました。

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玄関の飾り付け

昨日までに大掃除を終えました。

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大掃除

 

今日は食料を買いに出かけました。

私がいつも買い物をしている国道沿いの大型スーパーは普段とは違って、「こんなに人吉に人が住んでいたんだ」と驚くくらいの数の車が駐車場を埋め尽くしていました。ゴールデンウィークの高速道路のサービスエリアのような景色です。

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スーパーの駐車場

去年の同時期はコロナの影響で、社会全体に買い物自体がはばかられる雰囲気がありました。それに加えて人吉は半年前に水害に遭い、とても正月を祝う気分ではないという心理状態で、ここまで混雑していなかったように記憶しています。その意味では、今年は去年より街も人も活気が出てきたので、喜ばしいことです。

 

外出ついでに足を延ばして街の中心地に出ました。

国宝・青井阿蘇神社は、初詣客を迎える準備がされていました。

水害で壊された赤い「禊橋」(みそぎばし)の欄干は、まだ壊れたままですが、新年には修復されることでしょう。

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青井阿蘇神社

境内を見ると初詣客が集まるのを当て込んで、夜店の屋台が並んでいました。

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青井阿蘇神社の境内に並ぶ屋台

去年の水害ではこの神社も大きな被害を受け、またコロナのため街を挙げての10月の例大祭おくんち祭」は中止。初詣も自粛となりましたので、境内に屋台が並ぶという光景は見られませんでした。

わが教会でのクリスマスは、何でも自粛という去年よりは祝祭的なことができて、一歩前進と書きましたが、神社もお正月らしい姿が帰ってきたようです。

教会だろうと寺社だろうと、およそ宗教というものは人の心に「将来への希望」を提示できなければ存在意義がないと私は考えます。

ですので、私には神社は異教ですが、今夜からここに集まるたくさんの初詣客が希望を持って帰ることに大いに期待しています。

 

神社の門前の下青井町は、水害の被害の最も大きかった地区の一つです。

水害後1年くらいまでは、壊れた廃屋が立ち並んでいましたが、今は多くが解体されて、ガランとした更地が広がっています。

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更地ばかりの下青井町界隈

この下青井町の一角に、ラーメン店「好来」がありました。

熊本県のラーメン店人気ランキング上位は、熊本市とその周辺の県北地域の店ばかりなのですが、唯一県南地域で入っているのが「好来」です。

とても小さい店で、メニューはラーメンしかありません。九州のラーメンのスープは総じて脂こく、私の好みではないのですが、こちらの自家製の麺と爽やかなスープの味は絶妙でした。私は人吉に来て、好来のラーメンが気に入り、いつも食べに行っていました。

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好来のラーメン(被災前に撮影)

 

しかし、昨年の水害で店が二階まで水没する被害に遭い、店の命ともいうべき製麺機も駄目になってしまったと知りました。

水害の翌月に店に行ってみましたが、閉まっていて看板も取り外されていました。その後しばらくして、店は解体されて更地になってしまいました。

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水害発生の翌月の好来

「ああ、もう廃業してしまったんだな」と思うと残念でたまらず、人吉名物の味を消し去った水害を改めて憎みました。

しかし、今日店があったところを通ると、何ということでしょう!新しい店舗が建っていたのです。もちろん今風の店構えで、以前のいかにも昭和のラーメン屋という佇まいではありませんが。

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好来の新店舗

店の扉には近日開店の張り紙がありました。

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近日開店の張り紙

あの酷い水害で店も製麺機も何もかも失い、絶望的な状況の中で、店主は営業再開を諦めず、1年半もの間準備していたのです。

新しい年を迎えたら、あの味も水害から復活して帰って来る…これもまた私にとって待ち遠しい希望の光の一つです。

 

あと数時間で迎える新しい年に、世界で様々な人々がそれぞれの希望を抱いていることでしょう。私もコロナ禍と自然災害というダブルの苦難を受けたこの地にあって、過去の不遇を嘆くよりも将来に希望を持って、新年を迎えたいと思っています。

 

皆様、どうぞ良いお年を!