九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。熊本県人吉市から情報発信しています。

「旧」敬老の日にあたって

2002年まで国民の祝日の「敬老の日」は9月15日でした。

現在の法律では、国民の祝日は9月第三月曜日に移っていますが、いずれにせよ9月であることに変わりはありません。

教会はどこでも高齢者の比率が多くなっており、9月に教会のイベントとして「敬老会」を行うところも少なくありません。私の前任教会でもやっていましたが、今のわが九州管区では普段教会に参祷している方のほとんどが高齢者のため、高齢の信徒を選んで殊更にお祝いする意味がないのでやっていません。

教会は老若男女、全ての人に開かれているのであって、決して老人クラブではないし、まして葬儀場でもないのですが…結果的にそのようになっています。

 

さて国民の祝日としての敬老の日は移動しましたが、行政の高齢者人口に関するデータの発表や、マスコミの話題のお年寄りに関する記事などは、今も9月15日に合わせて出されています。

私も上記のように、教会で普段から高齢者のお相手をすることが中心ですので、そういった情報をいつも注視しています。

 

まず厚労省の発表によれば、全国の100歳以上(百寿者)人口は86510人で前年から6060人増。51年連続で最多更新です。

最高齢者は福岡県在住で118歳の田中カ子さん。彼女は「世界最高齢者」としてギネスブックに登録されています。

日本正教会の信徒数が最多だったのは、ニコライ大主教が永眠した1912年で約3万3千人。現在は名簿上の信徒までかき集めても、全国で約9千人です。日本の百寿者だけで、日本正教会信徒の10倍近くいることに、日本社会の高齢化の進展にただ驚くばかりです。逆に日本正教会の信者が少なすぎるということでもありますが…

 

次に熊本県の発表を見ると、熊本県内の百寿者人口は1898人でやはり過去最多。人口10万人あたりの百寿者数は109.13人で、全国の都道府県の中で6位。

1000人に一人が100歳以上ということになりますから、熊本は大変な長寿県だと思います。さすがに信徒で100歳以上はいませんが、90代で頭も体もしっかりしている信徒は何人もいますので、熊本県人の長寿を身をもって実感しています。

特にこの熊本日日新聞の記事の中で目を引いたのが、市町村別の百寿者数ベスト3です。1位が人口74万人の政令指定都市である熊本市で585人というのは分かるのですが、第2位はなんと天草市の135人。天草市の人口は約8万人ですから、人口10万人あたりに引き直すと百寿者は約170人。全国平均の3倍近い人数です。

あくまでも想像ですが、天草は気候も良くて海の幸に恵まれているので、やはりそういう要素が健康にプラスになるのでしょうか。

都道府県別ではなく、全国の市町村別の人口10万人あたり百寿者数のデータを出せば長寿地域の特徴を検証できるのに、厚労省はやらないのかなと思いました。社会の高齢化に伴い、今は医療費の増加も大きな社会問題になっているのですから、予防医学の見地から「健康で長生きな人の生活様式」をより具体的にモデル化できれば、そういう医療費問題の解決にもつながると思うのですが。

 

また「元気なお年寄り」のニュースとしては、昭和7年生まれで89歳のトライアスリートトライアスロン選手)・稲田弘氏が紹介されていました。ちなみに12年前に亡くなった私の父も昭和7年生まれでしたが、全く病弱でしたので、同い年でそういう方がいるのには驚かされます。

私も勉強不足で、トライアスロンの競技距離というのは一種類しかないと思っていたのですが、実際には何種類もあり、稲田氏がやっているのは最も距離が長いアイアンマンという種目です。なんと水泳3.8㎞、自転車180㎞、ラン42.195㎞の合計226㎞とのこと!

私が福岡伝道所に出張する時は、人吉から180㎞を車で移動しているわけですが、それと同じ距離を自転車で行くだけでなく、4㎞近く泳いでさらにフルマラソンを走るのです。

しかも、稲田氏は定年の60歳で水泳を始め、トライアスロンには70歳で初挑戦。アイアンマンは76歳から始めたそうです。

稲田氏はインタビューで大学時代にやっていたのは登山と答えていますが、実は私が所属していた男声合唱団の大先輩です。何で合唱と正直におっしゃってくれなかったのでしょうか…

いずれにせよ、稲田氏の姿を見ていると、人間が何かを始めるのに遅すぎることはない、挑戦する限り人間に限界はないと教えられているような気がします。

 

新約聖書ルカによる福音書には、真の救世主を見るまで死なないと神に告げられ、救世主に会って安らかに逝くことを希望の糧にして長く生き続けたシメオンという老人が出て来ます。

私が死ぬ日は神しか知りませんが、生き甲斐を持って元気に過ごしている大先輩たちを見習って、自分も希望をもって歩んでいきたいと今日改めて思いました。

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ベッリーニ「イエスの奉献」(長い白髭の老人がシメオン)