九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

福岡歴史探訪 筥崎宮と香椎宮

この週末は福岡伝道所に巡回していました。

福岡県内は緊急事態宣言中であり、祈祷するかどうか迷いもありましたが、これまで書いてきたように飛沫感染防止、具体的には室内の換気と参祷者の沈黙の徹底をすることで聖体礼儀を執り行いました。感染に不安のある方は参祷を自粛していただいて結構ですとアナウンスしましたが、今日は12人が参祷しました。

 

さて巡回の時は、よく現地の歴史遺産を見て回っていますが、昨日は福岡市東区筥崎宮香椎宮を訪ねました。

 

筥崎宮は日本三大八幡宮の一つ(あとの二つは京都の石清水八幡宮と大分の宇佐神宮)。創建は921年です。

現在の社殿は1546年に大内義隆、楼門は1594年に小早川隆景、一之鳥居は1609年に黒田長政が建立。全て国の重要文化財に指定されています。彼らはその時点の筑前の領主であり、この神社がいかに時の権力者から崇敬を集めていたかが伺い知れます。

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重要文化財筥崎宮楼門(社殿はこの奥)

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重要文化財・一之鳥居


博多は鎌倉時代元寇で戦場となりましたが、この時、亀山上皇が「我が身をもって国難に代わらん」という祈願をしました。それによって神風が吹き、元軍を撃退したと信じられました。このことが武運長久の神社として、武家の崇敬を集めた理由です。

また博多の東公園に明治37年亀山上皇銅像が建てられて今に至っていますが、この原型の木像は筥崎宮に展示されています。この像は福岡県出身の彫刻家・山﨑朝雲が制作したもので、福岡県指定文化財になっています。

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福岡県文化財亀山上皇像(1902年制作)

また、元軍船の石製の碇が境内に置いてあります。これも福岡県指定文化財です。

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福岡県文化財・蒙古船の碇石(13世紀)

続いて6㎞ほど離れた香椎宮を訪ねました。

 

香椎宮は724年創建。間もなく創建1300年です。

また勅祭社の一つでもあります。勅祭社とは天皇が勅使を遣わしてお参りする特別な神社という意味で、香椎宮の他には伊勢神宮出雲大社など、全国で16しかありません。

 

神社の由来は1800年前、この地で崩御した仲哀天皇の霊廟を后の神功皇后が建てたことに始まるとのこと。皇后が植えた「綾杉」と、仲哀天皇の廟所に植えられた「香椎」の神木があります。

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神木「綾杉」

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神木「香椎」

ちなみに仲哀天皇ヤマトタケルの子で14代天皇仲哀天皇神功皇后の間に生まれた子が応神天皇です。この応神天皇を神として祀る神社が上記の筥崎宮など、全国の八幡神社です。『古事記』や『日本書紀』の登場人物の世界を実際に目にすると、改めて日本の古代史に興味が増してきます。

 

社殿は何度も火事で焼失しているそうで、現在の本殿は1801年、当時の福岡藩主・黒田斉清が建てたもの。「香椎造」という全国でここだけしかない意匠で、国の重要文化財に指定されています。

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重要文化財香椎宮本殿

 

神社もお寺も私にとっては異教の神殿ですから、お参りして拝んだり、おみくじを引いたり、御朱印を貰うようなことは決してしません。しかし、わが国の歴史的な精神文化を伝える存在であることも否定しません。ですので、私はそれを学ばせてもらうつもりで、歴史的な神社やお寺を敬意を持って訪ねています。

神社仏閣に限らず、九州は歴史遺産の宝庫ですので、それらを探訪するのがいつも楽しみにです。