九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

教会での子どもの安全と熱中症対策

全国的に猛暑が続いていると思いますが、人吉も猛暑続きです。

最高気温は7月18日以降、連続して30℃以上。27日からは今日まで4日連続で35℃以上の猛暑日です。

雨も降らないので地面はカラカラに乾ききっています。

 

司祭館の向かいの廃業した豆腐店が取り壊されたことは既に書きましたが、店があった場所は既に整地されています。連日の強い日差しと乾燥で砂浜のようです。

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解体された豆腐店の跡地

 

さて、この猛暑続きの九州で痛ましい事故が起きました。

保育園の送迎バスの中に一日中置き去りにされた5歳の園児が熱中症で亡くなったのです。

 

私の妻は保育園に勤めていますので、他人事とは思えません。

報道には詳しい経緯は警察が調査中とありますが、駐車しているバスのドアを園児が勝手に開けて乗り込むことは考えられませんから、登園時に降ろし忘れたのは明白です。

こういう送迎バスは安全対策として、運転者以外に保育士が同乗するはずですが、バスは園長自身が運転していて、他に大人はいなかったようです。

しかし仮に園長が子どもを降ろした後で車内を確認していなかったとしても(それもおかしな話なのですが)、亡くなった子どもは当然園内にいなくて「無断欠席」となるのですから、園から保護者に確認の連絡をするのではないでしょうか。

報道では、帰りのバスに子どもが乗っていないので、親の側が園に問い合わせて初めて分かったということですから、園は出席確認をしていなかったのであり、杜撰にもほどがあります。

つまり、これは当たり前の注意を払っていれば起こり得ないはずなのに、その当たり前のことを怠った「大人の不手際」によって、何の落ち度もない幼児の命が断たれた出来事なのです。

事故ではなく、事件といっても良いでしょう。

以前にも他県で、送迎バスからの降ろし忘れ事案が何回かあったように記憶しています。今回は死亡事故ですから、園長は業務上過失致死の罪に問われる可能性があります。しかし、だからといって責任者がいくら重い罰を受けようとも、失われた幼い命は戻って来ないのです。

 

教会の場合、特に高齢化が進んだ地方の教会の場合は、参祷者も高齢者ばかりで子どもの姿を滅多に見ません。日曜学校なんてどこの国の話か、という状態ではないでしょうか。(それは日本正教会さんだけでしょ、と言われたら身も蓋もありませんが…)

そういう状態ですと、教会内の子どもの安全対策がおざなりになりかねませんので、注意が必要です。

車内の熱中症はレアケースにしても、聖堂内は火のついたロウソクがたくさん立てられていますし、何十キロもある燭台は人がぶつかったらすぐ倒れてしまいます。暖房もお金のない教会では(人吉もそうですが)、クラシックな石油ストーブを使っており、直に触ると火傷の危険があります。

 つまり大人が目を離すと危ないものがたくさんあるので、信徒間による子どもへの目配りは必須です。

今回の出来事を教訓に、教会内での子どもの安全対策について再チェックしようと思いました。

 

もう一つ重要なのは、子どもだけでなく大人も含めた教会内での熱中症対策です。

正教会では、聖体礼儀で領聖(キリストの体に変化したパンと葡萄酒、すなわち聖体をいただくこと)する者は午前零時以降、飲食を一切してはならない決まりです。つまり、その日に最初に口に入るものが聖体でなければなりません。これを「禁食」といいます。

また、会堂内での飲食は禁止です。もちろん福岡や熊本のように、会堂以外の別室がない小教会では、祈祷後の会堂内での打ち合わせでお茶を飲んだりしますが、それは「他の場所の選択肢がないからやむなし」という理解です。

しかし、いくら決まりとはいえ、脱水が熱中症の原因の一つだと分かっている以上、会堂内での禁食を貫くことは限度があります。永遠の生命に与るために教会の祈祷に来て、地上の救急車を呼ぶはめになったら本末転倒です。

それに加えて、今はコロナ対策として祈祷中は窓を開けていますので、冷房の意味がありません。つまり従来以上に、教会内での熱中症のリスクが高いといえます。

そのようなわけで、九州の教会では管轄司祭である私の許可という形で、体調管理は全て各自の判断に任せる、よって祈祷中に会堂内で自由に水分を摂って良い、 ということにしました。

もっとも一番熱中症のリスクが高いのは、分厚い祭服を何枚も重ね着している私自身なのですが、こればかりは何とも…

 

普段は数人から、多くても20人くらいとはいえ、教会は人々が集まる場所ですので、今後もリスク管理を万全にしていきたいと考えています。