九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

コロナ禍の復活祭 今年も福岡が…

コロナウイルスの変異株が猛威を振るっていて、関西圏から全国規模で感染が広がっています。報道でもご承知のように、今日政府が4都府県を対象に緊急事態宣言を発令しました。

九州も比較的平穏だったのですが、この数日間で急に感染者が増えました。

 

10日ほど前、愛知県豊田市の教会の復活祭礼拝で36人もの大規模な感染クラスターが発生しました。

これを受けて、愛知県の大村知事は「教会の(施設の)使用禁止を検討」とまで発言しています。憲法で保障されている信仰の自由に行政が介入することになりかねない発言であり、本来なら許されないことです。

しかし、マスコミなどが知事に批判的でなかったのは、人の集まる場所での感染防止対策がこれまで言われてきたにも関わらず、やっていなかったに等しい結果だったので、人々の批判の目は教会の方に向けられたということでしょう。

これは教会を運営する立場である自分にはまさに他山の石であって、「絶対に同じことになってはいけない」と自らを戒める機会となりました。

 

さて、今年の正教会の復活祭は5月2日であり、福岡伝道所への巡回日(毎月第一日曜日)にあたります。

福岡伝道所は信徒開拓のために11年前に設立された拠点ですが、正味6畳間ほどのスペースに20人近い参祷者が集まります。

十分なソーシャルディスタンスの確保は困難なので、冬でも祈祷中は窓を開放し、年明け以降は「祈祷中に信徒が聖歌を歌うことを禁止」という、教会としては自殺行為になりかねない措置まであえて取りました。

そもそも昨年は、4月に発せられた緊急事態宣言が延長された関係で福岡に3か月も行くことができず、復活祭の祈祷の延期を繰り返した挙句に中止せざるを得ませんでした。キリスト教は「キリストの復活」が信仰の根幹であり、よって復活祭の祈祷をしない、というのはこれまた教会の自殺行為です。

そのようなわけで、感染防止対策を万全にした上で、いわばリベンジで今年こそ福岡の復活祭を執り行おうと準備してきました。

 

しかし、福岡県で連日200人超えの感染爆発…

福岡県は4月19日、県独自の感染防止対策として「4月20日から5月19日まで、県内全域を対象に不要不急の外出の自粛を要請」すると発表しました。

教会の感染防止対策をいくら講じても、「信者が家から出て教会に行くこと」自体が駄目となっては万事休すです。

 

5月号の教会報と日程表は既に印刷済みで、今日発送する予定でしたが、急いで福岡の執事長に連絡を取り、5月2日の福岡巡回の中止と、復活祭の6月への延期を了解してもらいました。

復活祭当日の5月2日は遊んでいるわけにはいかないので、場所を人吉ハリストス正教会に急遽変更です。

印刷済みの日程表は破棄して新しく印刷。教会報はカラーコピー代が勿体ないので(笑)、全部手書きで日付を訂正しました。

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教会報の日付を手書きで訂正

さらに、前述のクラスター発生教会のように、復活祭は不特定多数の人が参祷することで会堂が「密」となり、また無症状感染者も入り込む危険が高まりますから、従来の「祈祷中は歌わず沈黙」に加え、「信者でない人の参祷をお断り」することにしました。広く皆さんに「教会に来てみませんか」と呼びかけて来たのに、自分でそれを否定するようなことをせざるを得なくなり、本当に悲しいです。

 

しかし、それらの措置の内容と、こうなった理由については信者に伝えるべきだと思いましたので、別刷りでお知らせを作り、教会報に挟み込みました。

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挟み込みの「緊急のお知らせ」

このようにして、今日は朝から教会報の作り直しをして、人吉郵便局が閉まる前に発送できました。今日は金曜日で、今日中に発送できなければ、週をまたいで遅くなってしまうので、とりあえず間に合って安心しました。

 

「信仰があればコロナなど恐れるに足りず」「教会でコロナが心配など信仰が足りない」などといった考えをよく耳にしますが、私に言わせれば「無責任な虚言」以外の何ものでもありません。信者の健康と生命を危険にさらすという意味で「罪深い」ことです。むしろ司牧者は、信者をコロナウイルスの危険から守る責務があるものと考えます。
今は忍耐の時ですが、しっかり感染防止対策を取った上で、祈りの場である教会を守って行ければと思っています。