九州の正教会

日本ハリストス正教会のグレゴリー神父です。2019年から九州全域を担当しています。

熊本震災復興のシンボル・新阿蘇大橋 

今日は天気も良く、時間もあったので、妻と阿蘇まで車で行ってみました。

目当ての一つは、3月7日に開通した新阿蘇大橋を見ることです。

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開通した新阿蘇大橋

かつての阿蘇大橋は、熊本市大分市を結ぶ国道57号線から阿蘇に向かう国道325号線への分岐点にあり、交通の要でした。

2016年4月16日未明、熊本地震の二回目の揺れが発生した時、橋が架けられた山の斜面ごと崩落しました。

橋の残骸は今も震災遺構的に残されています。

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崩落した阿蘇大橋の残骸

この時、車で走行中の男子大学生が橋もろとも76m下の谷底へ転落してしまいました。彼は4月14日の最初の地震で被災した友人に水を届けに行き、帰宅が深夜になってしまったのです。

深い谷に落ちたため、警察は発見できずに捜索は打ち切られましたが、ご両親は毎日のように谷に降り、わが子を捜し続けました。

そしてついに、地震から3か月後の7月24日、岩に埋まった我が子の車を発見。8月11日にようやく車が掘り出され、車内にあった遺体がご両親のもとに帰りました。

同年代の子を持つ親として、私には忘れられない出来事でした。

それから3年後に、まさか自分も熊本県民になるとは想像もしていませんでしたが…

 

この崩落事故は「数鹿流崩れ」(すがるくずれ)と命名されました。

昨年10月、国道の再開工事が完了した時に、数鹿流崩れを忘れないための記念碑が立てられています。

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数鹿流崩れの碑と、崩落したままの山の斜面

今回、震災から5年を経て、ようやく新しい橋が完成したことは、震災復興の大きなマイルストーンの一つです。

しかし、震災復興の真の象徴は何といっても熊本城の修復完成であることは間違いありません。その日まで私も熊本県民の一人として、歩んでいきたいと思っています。